研究課題/領域番号 |
19K15980
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朝比奈 良太 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD) (00837487)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組織常在型メモリーT細胞 / アトピー性皮膚炎 / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
炎症収束後も末梢組織に留まり、抗原の再曝露に対して迅速に炎症反応を誘導する組織常在型メモリーT(Trm)細胞の駐在を制御できれば、ヒトおよびイヌのアトピー性皮膚炎に対する新たな寛解維持療法を開発できると考えられる。本研究の目的は、アレルギー性皮膚炎におけるCD4陽性Trm細胞における皮膚駐在メカニズムを解明することである。 これまでに、卵白アルブミン特異的なCD4+T細胞を移入した遅延型過敏症マウスモデルを用いて、CD4+Trm細胞は真皮樹状細胞のサブセットの1つである古典的樹状細胞2型(cDC2)とともに血管周囲性のクラスターを形成し、皮膚に駐在することが明らかになった。cDC2を特異的に除去できる遺伝子改変マウス(CD301bDTR)を用いて、cDC2がCD4+Trm細胞の皮膚駐在に重要であることを証明した。 本年度は、抗原再暴露時にはこのクラスターを起点に血管透過性亢進が起こり、迅速な炎症反応が誘導されることを明らかにした。また、CD4+Trm細胞とcDC2はCXCR6/CXCL16を介して相互作用をしていることを突き止めた。さらに、CXCR6陽性CD4+Trm細胞は抗原再暴露時にIFN-gやIL-13などのサイトカインを産生した。CXCL16中和抗体投与により、CXCR6陽性CD4+Trm細胞の数は減少した。 これらの研究成果は、CXCR6陽性CD4+Trm細胞が再燃誘導において中心的な役割を果たす可能性を示しており、CXCR6/CXCL16は新規治療標的となり得ると考えられる。今後は、ヒトやイヌのアレルギー性皮膚疾患に対するCD4+Trm細胞の駐在制御に基づいた寛解維持療法の開発が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD4+Trm細胞とcDC2の相互作用として、シングルセルRNAシーケシングなどを駆使してCXCR6/CXCL16を抽出した。さらに、これが治療標的となり得ることをCXCL16中和抗体により証明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CXCR6陽性CD4+Trm細胞とCXCR6陰性CD4+Trm細胞のRNA-seqを実施して、より詳細な遺伝子発現プロファイルを明らかにする。また、CXCR6ノックアウトマウスを導入して、より詳細な検討を行う。さらに、アトピー性皮膚炎(AD)モデルマウスおよびヒトやイヌのAD病変部皮膚を用いて、これまで得られた研究知見が外挿可能かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに以下の実験を行う予定が生じたため、期間延長を申請した。 1. CXCR6欠損マウスを導入して、CXCR6がCD4+Trm細胞の皮膚駐在に必要であること、さらにCXCR6陽性CD4+Trm細胞が再燃誘導時の病原性細胞であることを証明する。 2. ヒトおよびイヌのアトピー性皮膚炎病変部サンプルを用いて免疫組織化学を行い、マウスで得られた知見が外挿可能か検討する。
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