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2019 年度 実施状況報告書

SFTSウイルスを含むフレボウイルスの起源を探る

研究課題

研究課題/領域番号 19K15982
研究機関山口大学

研究代表者

下田 宙  山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (40719887)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードマダニ媒介性ウイルス / オルビウイルス / フレボウイルス / Kemerovoウイルス / 渡り鳥
研究実績の概要

初年度は北海道の2地点における渡り鳥に付着したマダニを捕集した。12種類の渡り鳥(大多数はアオジ)より2属5種類、計673匹のマダニが採集された。シュルツェマダニ(93.0%)が最も多く採取され、パブロフスキーマダニ(5.1%)、オオトゲチマダニ(2.4%)、ウミドリマダニ(0.4%)、アカコッコマダニ(1.5%)が続いた。採集したマダニを同種、同ステージ、同宿主種、同捕獲日でプールし、ウイルスの網羅的調査を実施した。
ウイルス分離の結果、レオウイルス科オルビウイルス属に属するKemerovoウイルス1株および未同定のウイルス2種の分離に成功した。Kemerovoウイルスは国内で分離報告はないウイルスであり、ロシアの熱性の症状を示したヒトの脳脊髄液より初めて分離された。ロシアおよびカザフスタンで分離・検出されており、感染実験ではサルに髄膜炎を引き起こした報告がある。ロシアで確認されているウイルスが渡り鳥に付着したマダニより分離されたことから、渡り鳥によって国内に運ばれた可能性が示唆された。未同定のウイルスに関しては次世代シークエンス等で同定し、解析を進めていく予定である。
ウイルスの遺伝子検出ではシュルツェマダニの1プールよりムカワウイルスが検出された。ムカワウイルスは北海道で過去に分離が報告されているブニヤウイルス目フレボウイルス科のウイルスであり、病原性等に関しては未だ明らかとなっていない。
フレボウイルス科のウイルス蛋白発現プラスミドの作成については現在進行中である。これらのプラスミドを用いた網羅的な血清疫学調査を実施していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で予定している研究内容は主に以下の4つであり、現在の進捗状況は以下の通りである。
【①マダニにおけるTBPVの探索】本年度は北海道の2地点において調査研究を実施し、ウイルスの分離および検出に成功した。目的のマダニ媒介性フレボウイルスの分離はまだ出来ていないが、ムカワウイルスの検出に成功した。【②TBPVの各種蛋白発現プラスミドの作製】保有しているフレボウイルスのプラスミドはほぼすべて作製済みである。引き続き新たに分離・検出されたウイルスについてはプラスミドの作製を試みていく。【③TBPVの抗体保有状況の調査】来年度はこれらのプラスミドを用いた血清疫学調査が可能である。【④各種TBPVの発現プラスミドを用いた病原性解析】各ウイルスの病原性の解析はまだ実施していない。
以上のことから本研究はおおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

令和2年度、本研究は以下の通り実施する。
【①マダニにおけるTBPVの探索】引き続き、植生上マダニおよび渡り鳥や野生動物に付着したマダニの採集を試みる。現在、コロナウイルス流行の影響で出張調査が捗らない状況ではあるが、県内を中心にできる限りのサンプルを採集していく。【②TBPVの各種蛋白発現プラスミドの作製】引き続き、プラスミドの作製を試み、③・④の実験に供試する。 【③TBPVの抗体保有状況の調査】申請者らはこれまでに種々の野生動物のサンプリングを全国各地で行ってきており、10年以上の継時的なウイルスの動態を定点で知ることが可能である。また、上述の通り本研究課題でも採材は継続して新たなサンプルを確保する。上述の各種TBPVのG およびN蛋白の発現蛋白を用いて確立した間接ELISAにTBPVに対する抗体の保有状況を網羅的に調査する。 【④各種TBPVの発現プラスミドを用いた病原性解析】SセグメントにコードされているNSs蛋白は宿主のType Iインターフェロンの分泌を抑制す ることがフレボウイルスの病原性の一助を担っているとされている。②の各種蛋白発現プラスミドを用いてそれぞれのウイルスの病原性の評価 および病原性に重要な部位等の解析を実施する。 【⑤総括】令和2年度前半までを主な実地調査期間とする予定であったが、コロナウイルス流行の影響で、前半は出張調査に出向くことが出来ていない。よって、令和2年度末まで可能な限り調査研究を遂行していく。年度末までに得られたデータをもとに、結果の総括的な解析を実施する。疫学的調査および病原性解析によって得られたデータを統合し、国内のTBPVの起源を明らかにする。本研究で得られた知見はTBPVの侵入・広がりに対する 監視の強化および対策の重要性の普及につながることが期待される。

次年度使用額が生じた理由

本年度、旅費として450千円計上していたが、80千円しか使用しなかった。長崎や鹿児島におけるサンプリングも計画していたが、北海道でのサンプリングに留まったことに加えて、学会発表が所属研究室主催であったため旅費が必要とならなかった。
次年度に持ち越した使用額は主にサンプリングおよび学会発表における旅費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Mosquito-borne viruses, insect-specific flaviviruses (family Flaviviridae, genus Flavivirus), Banna virus (family Reoviridae, genus Seadornavirus), Bogor virus (unassigned member of family Permutotetraviridae), and alphamesoniviruses 2 and 3 (family Mesoniviridae, genus Alphamesonivirus) isolated from Indonesian mosquitoes2020

    • 著者名/発表者名
      Supriyono, Kuwata R, Torii S, Shimoda H, Ishijima K, Yonemitsu K, Minami S, Kuroda Y, Tatemoto K, Tran NTB, Takano A, Omatsu T, Mizutani T, Itokawa K, Isawa H, Sawabe K, Takasaki T, Yuliani DM, Abiyoga D, Hadi UK, Setiyono A, Hondo E, Agungpriyono S, Maeda K.
    • 雑誌名

      Journal of Veterinary Medical Science

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1292/jvms.20-0261

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 渡り鳥によるマダニ媒介ウイルスの越境の可能性2019

    • 著者名/発表者名
      下田 宙,南 昌平,高野 愛,青木 栞,水野純子,立本完吾,米満研三,Supriyono, Ngo Thi Bao Tran,鍬田龍星,馬田勝義,仲村 昇,出口智広,前田 健
    • 学会等名
      第71回日本衛生動物学会大会
  • [学会発表] 国内におけるマダニ媒介性ウイルスの実態2019

    • 著者名/発表者名
      下田 宙、前田 健
    • 学会等名
      第71回日本衛生動物学会大会 市民公開講座 「マダニが運ぶ感染症から身を守れ!」
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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