研究課題
本研究では国内におけるSFTSウイルスを含むマダニ媒介性フレボウイルスの起源を探ることを最終目的とし、渡り鳥に付着したマダニを中心とした調査研究を実施した。2年間にわたり、北海道クッチャロ湖および風連湖において鳥類標識調査のために捕獲された鳥に咬着したマダニを捕集した。捕集したマダニは形態学的に種同定した後、ウイルス解析用にプールした。調査期間中、クッチャロ湖で放鳥された1648羽中299羽(寄生率:18.1%、1羽あたりの寄生数:1.32匹)、風連湖では1872羽中1012羽(54.1%、1.57匹)からマダニが捕集された。マダニ種別ではIxodes persulcatus(89.9%)とIxodes pavlovskyi(9.7%)が大多数を占め、その他にチマダニ属3種が捕集された。鳥種別では放鳥数が多いアオジを筆頭に、クッチャロ湖では14種、風連湖では18種の鳥類からマダニが捕集され、鳥種によって咬着していたマダニのステージや飽血の有無に違いが認められた。捕集されたマダニからはヒトに病原性のあるKemerovoウイルス、フレボウイルス属に属するMukawaウイルス、未同定のウイルス3種が分離・検出された。クッチャロ湖は樺太、風連湖は北方4島から渡り鳥は飛来してきており、極東ロシアよりウイルス保有マダニが運搬されていることが強く示唆された。また、Mukawaウイルスを含めて、種々のフレボウイルスの抗体検出系の確立に成功しており、飛来地・飛来元の野生動物における血清疫学調査を実施していく予定である。今後の研究の発展として、飛来元の調査も含めて、フレボウイルスのみならず、マダニ媒介感染症の起源について更に調査する予定である。
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merg Infect Dis
巻: 27(4) ページ: 1068-1076
10.3201/eid2704.204148
http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~vetmicro/html/