研究課題/領域番号 |
19K15990
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
草木迫 浩大 北海道大学, 獣医学研究院, 特別研究員(PD) (10838220)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マダニ / 人工吸血 / 吸血行動誘引物質 / 人工膜 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初、マダニの吸血行動を誘発する抽出物の検討ならびに人工吸血系確立に必要な人工膜の厚みの検討を予定していた。しかし、ドイツで開催されたマダニとダニ媒介性感染症の国際学会である 13th International Symposium on Ticks and Tick-borne Diseases (ISTTBD-XIII) に参加する機会を得たため、学会に参加後、海外産マダニで人工吸血実験を行っているドイツ・ベルリン自由大学の Ard Nijhof 博士を訪問し、海外産マダニを用いた人工吸血技術の教示を受けた。また、海外産マダニ式の人工吸血装置を用いて日本産マダニを使用した人工吸血実験を行った。 日本産マダニの優勢種であるフタトゲチマダニならびに海外産マダニで人工吸血法が確立しているマダニ属と同属の日本産マダニであるシュルツェマダニの成ダニを実験に供した。吸血装置は、ベルリン自由大学で作製したものを使用した。6 穴プレートにウシ血液を添加し、その上に吸血装置を設置した。吸血装置に接着した人工シリコン膜の厚さは、フタトゲチマダニ用で 10 μm、シュルツェマダニ用で 80 μm のものをそれぞれ使用した。マダニが接着する膜面には牛の被毛由来の抽出物を塗布し、マダニの吸血行動誘引物質として用いた。マダニを装置内に入れ、37℃・相対湿度 90% ・明/暗 16 時間/ 8 時間の諸条件で吸血実験を行った。その結果、フタトゲチマダニならびにシュルツェマダニの成ダニはどちらも吸血に至らず、人工膜への誘引・固着も起こらなかった。以上の結果から、まず日本産マダニの吸血行動誘発物質の検討が必須であると考えられた。また、実際にマダニを用いた人工吸血実験を行ったことで数点の改良点が見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画を変更し、今年度は海外産マダニで使用される人工吸血法を用いた実験系を申請者自身が執り行い、技術の習得に努めた。また、実際に行われているマダニの人工吸血系を自身で経験できたことにより、計画当初では想定していなかった改良点が数点見いだされた。1 点目が、マダニ吸血を行う際の吸血条件 (温度・湿度・明暗) の検討である。2 点目が、マダニの飢餓期間 (吸血実験に供するマダニの前回の吸血からの未吸血期間) の検討である。3 点目が、吸血行動を活性化する処置の検討である。以上の 3 点を新たに検討項目に加えるため、全体の進捗としてはやや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、まず、マダニの吸血行動を誘発する動物被毛からの抽出物における動物種の選定ついて検討を行う。海外産マダニの人工吸血系で使用される動物種の被毛はウシのものを使用しているが、日本産マダニの優勢種であるフタトゲチマダニの成ダニは中型から大型動物に寄生するため、中型動物であるイヌやウサギ、大型動物であるウシやその他の野生動物 (イノシシなど) の被毛を採集し、動物被毛よりの抽出物を作製後、マダニの探索行動が活発になるかを検証する。その後、日本産マダニの吸血に適した人工膜の厚さの検討を行う。さらに、【現在までの進捗状況】で述べた新たな検討項目についても、順次検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、海外産マダニの人工吸血系を用いた吸血実験に習熟するために使用した。また、申請者は、本研究課題以外に日本学術振興会特別研究員 PD にも採用されており、ドイツへの渡航費等は学振 PD の研究費でまかなった。さらに、申請者は 2020 年度より別の研究機関への就職が決まっていたこともあり、次の研究機関でのスタートアップのためにその分の予算を次年度以降に持ち越すこととした。
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