研究実績の概要 |
これまでの研究において、我々はアフリカのザンビアで発熱患者ならびにコウモリからヒト病原性新世界型回帰熱ボレリアの分離に世界で初めて成功した。しかし、なぜ北米大陸にのみ分布する新世界型回帰熱ボレリアがアフリカ大陸(旧世界)に分布しているのか、また、その多様性は未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、ザンビアにおけるコウモリの回帰熱ボレリアに対する血清疫学調査と分子生物学的調査ならびに菌体分離と次世代シーケンス解析を通じて同地域の新世界型回帰熱ボレリアの多様性やその分布・拡散にコウモリが関与しているかを明らかにする。 今年度は、ザンビアの4か所で捕獲された6種のコウモリ(81 Epomophorus crypturus, 89 Eidolon helvum, 11 Miniopterus fraterculus, 91 Nycteris thebaica, 4 Rhinolophus swirnyi, 17 Rousettus aegyptiacus)、計293匹からボレリア属細菌の遺伝子検出を行った。その結果12検体(6 R. aegyptiacus, 1 M. fraterculus, 3 E. helvum, 1 Ep. crypturus, 1 N. thebaica)からこれまでの研究で発見した新世界型回帰熱ボレリアの遺伝子が検出された。また、4検体(3 N. thebaica,1E. helveum)からはライム病ボレリアの遺伝子が検出された。さらに、血清調査に向けたELISA系の確立に向けた研究を開始した。 これまでの結果から多種のコウモリが回帰熱ボレリアの分布に関わっていることがわかった。また、アフリカ大陸においてライム病ボレリアの検出例は少なく、南部アフリカで検出は本研究が初めてである。
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