これまでの研究において、我々はアフリカのザンビアで発熱患者ならびにコウモリからヒト病原性新世界型回帰熱ボレリアの分離に世界で初めて成功した。しかし、なぜ北米大陸にのみ分布する新世界型回帰熱ボレリアがアフリカ大陸(旧世界)に分布しているのか、また、その多様性は未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、ザンビアにおけるコウモリの回帰熱ボレリアに対する血清疫学調査と分子生物学的調査ならびに菌体分離と次世代シーケンス解析を通じて同地域 の新世界型回帰熱ボレリアの多様性やその分布・拡散にコウモリが関与しているかを明らかにする。 今年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響もあり、ザンビアにおいて新たなコウモリサンプルの取得および解析を実施することができなかった。初年度の研究においてザンビアの複数のコウモリから回帰熱ボレリアを検出し、コウモリが回帰熱の分布・拡散に関与していると考察された。そこで、ザンビアのコウモリと日本のコウモリとの比較を試みた。日本国内においてヒナコウモリならびにその外部寄生虫(コウモリノミ、コウモリトコジラミ)のサンプルを入手することができた。これらのサンプルからDNAを抽出し、既存のフラジェリン蛋白質遺伝子を標的としたnest-PCRおよび昨年度の研究で確立したボレリアの16Sリボソーマル遺伝子を標的としたreal-time PCRの系を用いたボレリア属細菌のスクリーニングを実施した。しかし、陽性検体は得られなかった。
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