研究課題/領域番号 |
19K15994
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
渡邉 謙一 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (10761702)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 褐毛和種 / 細胞質内封入体 / SOD1 / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
褐毛和種牛の封入体病(IBD)は、異常興奮や振戦などの神経症状と脳幹部の神経細胞における封入体形成を特徴とする致死性神経疾患で、異常興奮による肉質低下や死亡による経済的損失の大きな疾患である。IBDの原因は不明であるが、褐毛和種牛でのみ報告されている。褐毛和種牛は日本固有の稀少な肉用牛であり、血統維持の観点から原因となる変異を特定し、IBDの発症を回避する必要がある。本研究ではIBDの病態解明を目的とし、更には遺伝子診断法の確立と遺伝子変異の浸潤状況調査を行う。
本年度は過去のIBD症例および対照例のFFPE組織からDNA抽出を行い、次世代シーケンサーを用いた原因遺伝子の探索を試みた。しかしながら、FFPE組織から抽出したDNAは変性や断片化といった品質低下が認められたため、高度な解析は困難であると考えた。そこで、新たに褐毛和種牛の脳組織34例(臨床症状等の背景情報が不明なものを含む)を収集し、組織学的検索を実施したところ、これら34例のうち少なくとも16例に封入体の形成が認められた。新規9症例(5例は封入体あり、4例は封入体なし)とホルスタイン種乳牛12例および黒毛和種牛2例のsod1遺伝子を比較したところ、exon領域に変異は見つかっていない。また、抗ウシSOD1ウサギ血清を独自に作製し、組織学的スクリーニングを実施したところ、封入体の形状にはいくつかのバリエーションが存在し、封入体の形成課程を思わせる変化も確認された。IBDの病態考察と組織学的診断基準の設定は遺伝学的検討の根幹をなす部分であり、現在は新規症例の収集と形態学的解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去症例のFFPE組織から抽出したDNAは変性や断片化の影響により拡散の増幅効率が悪く、当初予定していた遺伝学的解析が難航している。新規症例を確保できたことは僥倖であるが、症例数が増えたために研究全体の進行はやや遅れている。また、COVID-19の世界的流行により研究活動の自粛や学会の中止などを余儀なくされていることも研究の進捗状況に影響している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られているデータを元に論文執筆を進めている。また、十分な研究材料を入手できる見通しが立ったため、DNA, RNA, 蛋白といった様々な角度から解析を行う事が可能となった。今後は新規症例の収集を継続しながら形態学的解析、SOD1蛋白の生化学的解析を中心に病態解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた次世代シーケンサーによる解析を延期したため、試薬等の購入に係る費用の一部を繰り越した。
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