肝蛭症は世界各地で広く発生する人獣共通感染性の吸虫症で、畜産業に与える経済被害は吸虫類の中で最大である。本研究では、宿主体内への寄生による酸素濃度の劇的な変化に応じて、肝蛭のミトコンドリア呼吸鎖の生化学的特性がどのように変動するかを解析した。肝蛭の成虫では、低酸素環境に適応したフマル酸呼吸が作動していることが明らかになった。一方、幼虫では生息環境の酸素濃度に応じて酸素呼吸とフマル酸呼吸を切り替えることが判明し、低酸素環境の宿主体内では、薬剤標的としてフマル酸呼吸が極めて有望であることが示された。
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