研究課題/領域番号 |
19K16001
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
君付 和範 大分大学, 医学部, 助教 (10829724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 狂犬病 / 末梢感染 / 1088株 / RFLuc |
研究実績の概要 |
本研究は、野外株低用量接種により長く不定な潜伏期を再現したマウスモデルを使用して、潜伏期間中のウイルスの局在の特定、さらに潜伏部位における遺伝子変動を解析することを目的としている。本年度は、末梢感染マウスモデルの感染動態を把握することと、感染初期の狂犬病ウイルス局在部位を特定することを目的として、以下の実験を実施した。 まず、接種部位による狂犬病ウイルスの局在の違いを検討するため、RFlucを発現する組み替え野外株ウイルス(1088/RFLuc株)10^5FFUをマウスの右後肢筋肉内あるいは右足蹠に感染させin vivo imagingにより経日的にウイルスの局在を観察した。両群ともに接種3日目より右後肢において、発光シグナルが検出されたが、右足蹠接種群の方がやや限局してみられた。発光シグナルは接種5日目より脊髄で検出され、両群ともに接種8日目には神経症状を呈した。ICG(インドシアニングリーン)をマウスの右後肢筋肉内あるいは右足蹠に接種し比較したところ、筋肉内接種では接種部位(右骨格筋)と肝臓で蛍光が見られたが、右足蹠接種では接種部位(右足蹠)、リンパ管、膝下リンパ節、坐骨リンパ節に限局していた。以上の検討から今回の接種部位では発症まで病態に違いは認められないものの、右足蹠の方が初期の潜伏部位が限局的である可能性が示唆された。さらに、ウイルスが局在する組織を詳細に確認するため、1088/wt株10^5FFUを右足蹠に接種し末梢組織および中枢神経系の各組織におけるウイルス遺伝子を検出した。その結果、接種3日目にリンパ節および脊髄のみでウイルス遺伝子が検出された。低用量のウイルス接種量を検討するために各種濃度の1088/wtを右足蹠に接種したところ、5x10^2まで感染が成立(1/6匹)し、LD50は1.6x10^3FFUであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、感染初期の末梢組織における狂犬病ウイルスの局在部位を特定し、さらに感染細胞の特定まで行う予定であったが、感染細胞の特定を実施するまでに至らなかった。本年度の研究で感染初期の末梢組織における感染部位を把握することができたので、次年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、感染初期のリンパ節に着目してウイルス感染細胞の同定と同部位で発現する宿主遺伝子の解析を進める予定である。感染細胞の特定については、感染初期のリンパ節を採取し、抗狂犬病ウイルス抗体及び各種細胞マーカーを用いて組織学的に解析する。宿主遺伝子の解析については、RNA-seqによって、同部位で特異的に発現している遺伝子を網羅的に解析する。同様の解析を低用量接種(LD50濃度)で実施し、長い潜伏期間においても同様の結果が得られるかどうか検討する。
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