本年度は鼻腔粘膜生ワクチンを自然免疫のトリガーとして用いる方法の検討を実施した。 市販されている鼻腔粘膜生ワクチンを牛に投与し、投与前後で気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収し、どのような免疫学的変化が気管支肺胞領域で起こるのかを解析した。 継続的な変化および詳細な機能変化について解析するための試験として、実験動物施設において投与群3頭、非投与群3頭の子牛を用いて投与前、投与後1、3、7、14、21、28日に採材を実施した試験を実施した(試験1)。さらに、実際の牛の飼養環境での変化を解析するために、牧場飼育牛を用いて投与群10頭、非投与群10頭の子牛を用いて投与14日に採材した試験を実施した(試験2)。 試験1の結果、投与群において投与翌日にBALF中の細胞分画が変化していた。よって、鼻腔粘膜生ワクチンは、気管支肺胞領域に対して何らかの刺激を与えることが考えられた。一方で、in vitro試験で確認されていた肺胞マクロファージにおけるmRNA発現量については投与群、非投与群間で有意な差は認められなかった。鼻腔粘膜生ワクチンに含まれている病原体関連分子パターンが肺胞マクロファージを刺激することにより自然免疫関連因子に変化が起こるという仮説を有していたが、BALを繰り返し実施したことにより、BALで使用した内視鏡による機械的刺激がおこり、ダメージ関連分子パターンが放出されてしまったのではないかと考えられた。 試験2の結果、投与群では非投与群と比較して投与群でIL-17A濃度が上昇していた。牛の呼吸器粘膜免疫におけるIL-17Aの役割については、不明な点が多いことから、今後詳細な解析を進めることで、鼻腔粘膜生ワクチンの作用機序を明らかにしていきたい。
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