研究実績の概要 |
脳の機能的問題を調査する上で加齢性変化を否定するために,てんかん発作を含む神経徴候をしめさない猫を対象にVoxel-based morphometryによる脳萎縮の検定を行った.その結果,両側頭頂葉および帯状回を中心とした大脳皮質の萎縮が認められることがわかった.この結果から,加齢による認知機能低下に頭頂葉皮質が関連することが示唆され,高齢猫が示す睡眠サイクルの異常や痛みへの鈍麻を引き起こす原因となる可能性が考えられた. 次に,3テスラMRIを用いた脳画像の部位を正確に指し示すため,同一個体による脳の病理切片を作成した.これにより,画像上の部位と病理学的部位への相関を示すことが可能になった.人医療におけるタライラッハの標準脳に近い猫の標準脳が作成されたと考える.しかしながら,病理切片作成時に脳を摘出した後にホルマリン固定をおこなったため,x軸,y軸,z軸でしめされる空間情報にMRI画像と乖離がはっせいしてしまったこともまた事実であった. 猫の安静時機能的MRIを撮像した後,人医療で用いられる解析ソフトSPM12を用いた解析を行った.しかしながら,標準脳への空間的正規化を行う際にエラーが生じたため,解析が不能であった.代替ソフトウェアとしてFSLを用いたが評価に利用可能な結果を算出することはできなかった.現在,人医療において比較的研究が盛んな分野となりつつあるデフォルトネットワーク解析であるが,獣医療においてその報告はなく独自のソフトウェア解析が必要になるのかもしれない.
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