研究課題/領域番号 |
19K16007
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
向田 昌司 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (80824797)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高血圧 / リンパ管 / 内皮細胞 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
本研究はリンパ管に着目し、リンパ管機能と高血圧症との関連を明らかにすることを目的としている。具体的には、高血圧症において炎症性反応による活性酸素種産生がリンパ管機能を障害するとの仮説を立て検討を行った。本研究実績の概要は以下のとおりである。 本研究では、自然発症高血圧ラットSHRおよびウィスター京都ラットWKY(コントロール)の胸管の機能を検討した。コントロールと比較し、高血圧を呈する成熟SHR(10~14週齢)において、アセチルコリン(ACh)による内皮依存性弛緩反応が大きく障害された。また、SHRリンパ管において、活性酸素種の産生が亢進し、NADPHオキシダーゼの発現上昇が見られた。活性酸素種スカベンジャーの処置により、成熟SHRで見られる内皮機能障害は改善された。以上のことから、SHRにおいて、活性酸素種の産生によりリンパ管機能が障害されていることが示唆された。一方、血圧上昇が見られない若齢SHR(4週齢)において、AChによる弛緩反応は正常であった。そこで、血圧上昇がリンパ管内皮障害の原因であるかを検討するために、2種類の降圧剤を用いてSHRの血圧を厳密にコントロールし、リンパ管の機能を検討した。4週齢のSHRにhydrochlorothiazideとreserpineを6~8週間投与し、SHRの血圧を正常値範囲内に調節した。非投与群と比べ、投与群においてリンパ管の内皮機能は有意に改善した。以上の結果から、血圧上昇がリンパ管の機能障害に関与する可能性が示唆された。 上記の研究結果より、高血圧を呈するSHRにおいて、リンパ管の弛緩機能は障害され、この障害には活性酸素種の関与が示唆された。また、リンパ管の機能障害は血圧上昇に伴い誘導されることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の計画に基づき、おおむね順調に研究が進展している。申請書の計画に基づき検討を行っている点や科学研究費補助金を無駄のないように使用している点が、順調に研究が進展している理由である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に実施した実験より、高血圧症を呈する成熟SHRにて、リンパ管の弛緩機能が障害されることが明らかとなり、高血圧症とリンパ管機能との関連性が示唆された。一方、高血圧症におけるリンパ管の収縮性機能については明らかとなっていない。そこで、高血圧におけるリンパ管の収縮反応性を検討することを、2020年度の研究方針とする。 これまでの予備検討の結果として、成熟SHRにて、コントロールラット(WKYラット)と比較し、リンパ管の収縮性反応が顕著に亢進されるという実験結果を得ている。この収縮増強メカニズムを明らかにするために、(1)リンパ管で蓄積する活性酸素種による影響、(2)血圧上昇による影響、(3)平滑筋収縮に関わる因子による影響について、それぞれ薬理学的手法を用いて詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、主に、計画していた実験が順調に進んだために予算を抑えられた点にある。この研究費は、本年度得られた結果をより詳細に検討するための実験費とする。但し、本年度の実験が、昨年度同様に順調に進むかは分からないため、無駄のない使用は常に心掛ける。
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