研究実績の概要 |
これまでに再生機構の破綻した尿細管に特異的に発現する因子としてCD44を抽出した。本年度は急性腎障害(AKI)から慢性腎臓病(CKD)への進展過程におけるCD44の発現動態を検索するため、雄性SDラットに30分あるいは60分の片側腎虚血処置を施し、再灌流後1, 3, 5, 7, 14および28日に剖検した。対照群には疑似処置を施し、処置後1および28日に同様に剖検した。 シリウスレッド染色の結果、60分群の14日後以降において間質の膠原線維面積の有意な増加が認められた。HE染色による尿細管の形態観察の結果、30分群では3-7日にかけて再生尿細管がみられた。一方、60分群では3-7日にかけて拡張した尿細管がみられ、14日以降の線維化病変の尿細管は拡張あるいは萎縮していた。 CD44免疫染色では、60分群の3-7日の拡張尿細管および14日以降の線維化病変における拡張/萎縮尿細管がCD44に明らかな陽性を示した。 60分群・28日時点の線維化病変の拡張/萎縮尿細管をレーザーマイクロダイセクションにより採取し、マイクロアレイおよび定量PCRを実施した結果、CD44は正常尿細管と比較して約100倍の発現上昇を示した。Ingenuity Pathway Analysis(IPA)によるパスウェイ解析では、CD44は線維化に関連する複数の遺伝子の発現を誘導していることが示唆された。 以上より、CD44はCKDの病態形成に早期から寄与しているものと考えられた。
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