腎虚血再灌流障害モデルラットを用い、急性腎障害(AKI)から慢性腎臓病(CKD)に至る過程において、再生機構の破綻した尿細管にCD44が特異的に発現すること、さらにその発現はAKI直後から線維化が生じるまで持続することを明らかにした。 CKD病態における線維化病変の再生機構の破綻した尿細管をレーザーマイクロダイセクションにて採取してマイクロアレイおよびパスウェイ解析を行ったところ、CD44は線維化に関連する遺伝子群の発現を誘導していることが示唆された。CD44の下流因子のうちFibronectin 1(Fn1)に着目してin situ hybridizationおよび免疫染色を行った。その結果、Fn1 mRNAは再生機構の破綻した拡張/萎縮尿細管の細胞質において発現の亢進がみられた一方、fibronectinタンパクはそれらの尿細管の周囲間質に認められた。これらの所見は再生機構の破綻した尿細管によるfibronectinの産生・分泌を示唆しているものと考えられた。 これまで結果より再生機構の破綻した尿細管は間葉系細胞の表現型を獲得していることが疑われたため、免疫染色にて上皮間葉転換関連因子の発現を検索した。その結果、再生機構の破綻した尿細管では近位尿細管分化マーカーであるaquaporin1の発現が減少しており、間葉系マーカーであるvimentinが発現していた。 以上の結果から、再生機構の破綻した尿細管では上皮間葉転換の生じていること、さらにCD44はこのような尿細管において細胞外基質の産生を誘導し、AKIからCKDへの移行に寄与していることが示唆された。
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