外耳炎はイヌにおいて最も発症率の高い疾患の一つである。治療には一般的にステロイド、および、抗菌薬、抗真菌薬が使用されるが、外耳炎と細菌の関連は十分明らかでない。本研究ではイヌの外耳道細菌叢の解析により、外耳道細菌叢と外耳炎の関連の解明を目指すものである。 2020年度は、健常群と疾患群の外耳道細菌叢の比較解析を進めるとともに、同一個体における左右の外耳道細菌叢の比較を実施した。 健常群と疾患群の比較においては、予測メタゲノム解析の結果、外耳炎群の細菌叢の特徴として、脂肪酸産、セラミド等の代謝が低い、抗生物質産生能が低い等の特徴がある事が明らかとなった。 同一個体における左右の耳の比較においては、β多様性解析の結果、片側性外耳炎罹患個体の健常耳(非炎症部)の細菌叢は健常個体と異なること、片側性外耳炎の個体の外耳道細菌叢の左右差は両耳健常な個体の左右差よりも大きいことが明らかとなった。 このことから、外耳炎の素因がある細菌叢が存在し、これを保有する個体においてはDysbiosisを起こしやすく、外耳炎を発症しやすい状態になっている可能性が考えられた。
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