研究課題/領域番号 |
19K16014
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
谷原 史倫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 特任助教 (90754680)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / ブタ / 体外受精 / CRISPR/Cas9 / エレクトロポレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、ゲノム編集技術により糖尿病と高血圧の両疾患を誘発する糖尿病性腎症モデルブタの創出を目指す。血圧調整機構に関連するBDKRB2遺伝子と膵臓形成に関連するPDX1遺伝子の両遺伝子をターゲットとし、申請者グループの開発した新規ゲノム編集技術(GEEP法)を用い、ブタ体外受精卵内にCas9タンパク質とguideRNA(gRNA)からなるCRISPR/Cas9システムをエレクトロポレーションにより導入することでBDKRB2/PDX1両遺伝子を改変したモデルブタを作製する。 本年度は、まずBDKRB2遺伝子の受精卵におけるノックアウト条件を検討した。BDKRB2遺伝子を標的とするgRNAを6種類作製し、エレクトロポレーションにより体外受精卵にCas9タンパク質とともに導入した。7日間の体外発生培養後、胚の発生能とゲノム編集効率を評価した。エレクトロポレーションを行っていない対照区(Control)と比較し、胚発生能(分割率、胚盤胞形成率)に対する有意な影響は確認できなかった。作製した胚盤胞について、シークエンシングによる遺伝子解析を行い、遺伝子変異を指標にゲノム編集の効率を評価したところ、2種のgRNAにおいて高いゲノム編集効率が確認された。 また、これまでに申請者らが作製したPDX1改変糖尿病ブタからの精液の採取は完了し、凍結精液の作製と体外受精後の胚盤胞形成率を基に体外受精条件の最適化を行った。一方で、F1世代のPDX1ヘテロノックアウトブタの作製と経過観察を行い、糖尿病モデルとしての評価を並行して進めている。次年度はこれら2種のgRNAとPDX1遺伝子改変ブタ凍結精子を用い、目的とする遺伝子改変ブタの作製に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに作製した複数種のgRNAをブタ体外受精卵にCas9タンパクとともに導入し変異導入率を検討した結果、BDKRB2遺伝子を効率的に改変するgRNAを2種類決定することができた。また、これまでに作製したPDX1遺伝子改変ブタからの採精と凍結精子作製、体外受精成績(胚盤胞形成率)の評価を行い、体外受精に実用可能であることを確認した。次年度は当初の予定通り、BDKRB2遺伝子とPDX1遺伝子の両遺伝子を改変したブタの作製に取り掛かることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
PDX遺伝子1改変ブタ精子を用いて作製した体外受精卵に対してGEEP法によりBDKRB2遺伝子の改変を行い、遺伝子改変後の胚発生と両遺伝子の変異を確認する予定である。その後、PDX1/BDKRB2遺伝子改変ブタ受精卵を受胚ブタへ移植し産子作出を目指す。胚移植成績が悪い場合は、gRNAの影響を考慮しBDKRB2遺伝子を標的としたgRNAを新たに複数種設計し、移植胚のゲノム編集に用いる。得られた子ブタのゲノム配列を解析し、PDX1/BDKRB2両遺伝子の変異を確認する。また、F1世代のPDX1ヘテロノックアウトブタに関しては引き続き経過観察を行い、糖尿病モデルブタとしての評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ブタ体外受精卵を用いた検討により非常に順調に効率のよいgRNAが得られたため、想定よりも使用額を抑えることができた。また、本年度では胚移植による遺伝子改変ブタの作製には至らなかったため、残額が生じた。 本年度で変異導入率の高いgRNAの選別も終了していることから、次年度においては予定通り胚移植を実施するため、母豚の購入および飼育・維持を中心に消耗品等に使用する予定である。
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