生体においてタンパク質は、様々なタンパク質と相互作用することにより、細胞・組織機能を調和的に制御している。古くから培養細胞レベルでのタンパク質間相互作用の網羅的解析(=インタラクトーム解析)は行われているが、生体組織 (in vivo) においては技術的な問題が多く存在し、成功例は少ない。本研究では、近年開発された「近位依存性ビオチンラベリング (BioID) 」と呼ばれる手法を用い、マウス組織におけるインタラクトーム解析技術の確立を目的とし、複数の新規ビオチンリガーゼノックインマウスを作製・解析した。 最終年度までに2種のビオチンリガーゼノックインマウスを作製し、従来のビオチン注射に比べ、0.5% ビオチン高含有餌の自由摂食により、生体マウスにおけるビオチン化を高効率に引き起こせることを発見した。さらなるビオチン化の促進を目指し、タンパクX遺伝子座に対する高活性型ビオチンリガーゼノックインマウスを作製したところ、想定通りビオチン化タンパクの収量増加が認められ、タンパクXの脳内相互作用因子の同定に成功した。 最終年度はタンパクY遺伝子座に対する高活性型ビオチンリガーゼノックインマウスを作製し、ビオチン投与条件の最適化を行った。その結果、0.1% ビオチン高含有餌の 3 日間の投与でも近位タンパクのビオチン化を誘導できることが判明した。一方でタンパクY-高活性型ビオチンリガーゼノックインマウスはホモノックインマウスが得られず、胎生致死であることが示唆された。そのため、遺伝子によっては高活性型ビオチンリガーゼノックインが適さない可能性が考えられた。
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