研究実績の概要 |
本研究課題は、先天的・後天的要因による子宮の器質的欠損や、子宮内膜の菲薄化による着床障害等の子宮機能低下など、現在の医療では克服し難い難治性妊孕性障害に対する画期的治療法の提供を目的とし、再生医療の観点から課題克服に取り組むものである。申請者らは、マウス子宮の組織片に界面活性剤処理を施し、細胞成分を虚脱させ細胞外基質タンパク質のみで構成された脱細胞化子宮組織をレシピエントマウスの子宮内に移植し、機能的な子宮組織の部分的再生に成功した。また、この子宮再生に転写因子STAT3が関わっていることも明らかにした(Hiraoka T et al. JCI insight, 2016)。子宮特異的STAT3欠損マウスは着床障害による不妊を呈することが知られており、かつ子宮内膜は周期的に再生を繰り返す組織であることから、STAT3は子宮内膜の再生能と着床能を橋渡しする重要な分子である可能性が示唆された。そのため、着床におけるSTAT3の機能解析を進め、STAT3に関わる決定的な分子群を同定してゆけば、マウス脱細胞化組織移植モデルを用いてさらに詳細な子宮再生メカニズムが解明できると考えられた。申請者らの研究グループは子宮特異的低酸素誘導因子HIF2α欠損マウスを用いた着床研究(Matsumoto L et al. J Clin Invest, 2018)に代表されるようにマウスモデルを用いた着床研究のノウハウを有しているが、申請者が関わり、STAT3の上流因子である白血病阻止因子LIFが着床を制御する分子学的機序に関する研究は、英文学術誌に掲載された(Matsuo M et al. Endocrinol, 2019)。また、STAT3の機能を含む着床の分子生理学的機序に関する総説も本年度に英文学術誌に掲載された(Fukui Y et al. Reprod Med Biol, 2019)。
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