研究課題
本研究は、子宮性不妊症に対する画期的な治療法の開発を目指して遂行された。大きな目標として、①妊娠成立に関わる子宮内膜の分子制御機構の解明、②①を模倣する機能的な子宮内膜の試験管内構築、を掲げた。本研究基金によってまず①に関して一定の成果を得た。子宮内膜の修復に必須の因子である転写因子STAT3を子宮上皮・間質において部位特異的に欠損させた遺伝子改変マウスを作製し、表現型・機能解析を行ったところ、子宮上皮・間質いずれのSTAT3も着床に必須でありながら、各々が異なる機序で着床を制御していることを解明した。この成果は、子宮内膜上皮だけでなく間質も着床に必須の役割を果たしていることを示しており、着床可能な子宮内膜の試験管再構築に向けて、近年報告が見られる子宮内膜上皮オルガノイドでは機能が十分に再現できない可能性が示唆された。②に関して、子宮内膜の生体内再構築に関する申請者の先行研究で用いた脱細胞化子宮組織(DUM)を用い、試験管内での培養システム構築を試みた。DUM内に細胞を播種し、培養液を還流する独自のデバイスを作製し、諸々の条件を検討したが、極性を有する機能的な子宮内膜の再生培養システムの確立には至らなかった。一方で、申請者は子宮性不妊症に関わる子宮腺筋症をマウスで発症させることに成功し、筆頭著者として英文論文で公表した(Hiraoka T et al. Endocrinol 2022)。子宮腺筋症は子宮内膜の筋層内発育をきたす良性疾患であるが、この研究の結果、子宮内膜の再構築は必ずしも固有の細胞外基質を必須としない可能性が示唆された。このことは、子宮内膜の試験管内再構成において、DUM以外の担体を用いる手法の合理性を示唆していると考えられた。今後は、密度や弾性の異なる担体の使用や、培養液の条件に関してさらなる検証が必要と考えられた。
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Endocrinology
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