研究実績の概要 |
本研究課題は世代交代に約5年を有するカニクイザルにおいて、F0世代で再現性ある疾患モデル動物を作出する基盤技術の開発を目的としている。これまでの研究からノックアウト法によるモデル動物の作出については、CRISPR/Cas9システムを用いgRNAを工夫することで、片アレル特異的な変異を誘導する技術を開発した。このことから再現よくF0世代で疾患モデル研究に耐えうるモデル動物を作出する基盤技術の開発に目処がついた(Tsukiyama T, Kobayashi K, Nakaya M, et al., Nat Commun, 2019)。一方で、より詳細な疾患発症の分子メカニズムを解明するためにはレポーター遺伝子の挿入や遺伝子置換などの、高度な遺伝子工学的手法が必須となる。しかしながら相同組換えによる大きなフラグメントのノックインは、既存の方法では効率が悪いことが知られている。そこで本年度については本研究課題の発展型として、ノックイン法による疾患モデル動物の作出についても検討を行った。先ずノックイン効率を正確に定量するために、マウスES細胞においてROSA26遺伝子座へ、IRES-NeorもしくはIRES-Zeorを挿入するためのドナーベクターの構築を行い、gRNAの設計と選定を行った。またマウスES細胞においてネオマイシ及びゼオシンによる薬剤選抜の条件を設定した。 次にノックイン効率を高めるために内在性の相同組換え機構に着目した。CRISPR/Cas9システムとの融合を念頭に、相同組換え関連因子を発現させる複数のプラスミドベクターを構築した。現在、構築ベクターのvalidation 及びES細胞におけるノックイン効率の検討を行っている。
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