研究課題/領域番号 |
19K16023
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
中家 雅隆 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特任助教 (90805459)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発生工学 / 非ヒト霊長類 |
研究実績の概要 |
本研究課題は性成熟に約4年を有するカニクイザルにおいて、F0世代で再現性ある疾患モデル動物を作出する基盤技術の開発を目的としている。これまでの研究結果により、CRISPR/Cas9法を用いたノックアウトによる疾患モデルサル作出の技術開発については大幅な進展があったことから、本年度はレポーター遺伝子を発現するトランスジェニック動物を効率的に作出する技術の開発について、検討の幅を広げた。トランスジェニックについてはpiggyBacによるレポーター遺伝子の挿入を検討した。カニクイザルへの応用を念頭にマウス卵子において、ドナーベクターの濃度及び、piggyBacの導入タイミングや動態制御の検討を行い、再現性よく全身でレポーター遺伝子を発現するマウス産子が得られた。このことから、カニクイザルについてもマウスにおける条件を応用し、蛍光レポーターを発現するトランスジェニックカニクイザルの作出検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はノックアウト技術にとどまらず、トランスジェニックやノックインによるレポーター遺伝子を発現するモデル動物の新規作出技術の開発に着手した。カニクイザルへの応用を念頭にpiggyBacシステムについてマウス卵子を用い、蛍光レポーター遺伝子を発現するトランスジェニック動物の作出を検討した。ドナーベクター由来のトランジェントな発現があることから、偽陽性の発現が観察されない最小限のドナーベクター濃度の検討を行った。次に、piggyBacの導入タイミングや動態制御を工夫することで、モザイク性を低減できる条件を検討した。設定した条件で作出した胚について、胚盤胞期で蛍光が認められた胚をレシピエントマウスに移植したところ、獲得した全ての産子について、全身に蛍光レポーター遺伝子を強く発現していることを確認した。現在、カニクイザルについても同様の条件で検討を行っている。さらにレポーター遺伝子を標的遺伝子座に効率よく挿入するための新規のノックイン技術の開発について検討を進めた。DNAの二本鎖切断と同時に複数の相同組換え関連因子を発現するベクターシステムを構築し、人為的に内在性の相同組換え環境の再現を試みた。構築したベクターシステムを評価するために、マウスES細胞においてROSA26遺伝子座への薬剤耐性遺伝子のKIの検討を行った。結果、KI効率は既存の方法と比較し有意な差は認められなかった。このことから、構築したベクターシステムが内在性の相同組換え環境を再現できていない可能性があり、引き続き検討の余地があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、CRISPR/Cas9によるノックアウトによる疾患モデルサルの作出およびpiggyBacによるレポーター遺伝子を発現するトランスジェニック動物作出技術については一定の成果が得られた。トランスジェニックカニクイザルについては、胚における条件検討は完了しており、胚移植実験による産子獲得の検討と表現型の解析を引き続き行っていく。さらに次年度はレポーター遺伝子を効率よく挿入するための新規のノックイン技術の開発について検討を進める。ノックイン効率が低い要因の1つにDNAの二本鎖切断修復経路において、非相同性末端結合の活性が高いことが考えられた。そこで、相同組換え関連因子をdCas9により標的遺伝子座に誘導し、人為的に相同組換え機構を誘起するという狙いで検討を行ったが、既存の方法と比較して大きな改善が認められず、構築したベクターシステムが内在性の相同組換え環境を再現できていない可能性が考えられた。このことから、プラスミドベクターの構成を見直し、再度検討を行っていく。
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