研究課題
本研究はカニクイザルにおいて、ヒト病態モデルを効率的に作出するための基盤技術開発を目的に行った。本研究期間における成果を以下に記す。1. 遺伝子破壊(KO)によるモデルザルの作出:常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の原因遺伝子であるPKD1遺伝子を標的とした。CRISPR/Cas9法を用いることで、カニクイザル受精卵において効率よくPKD1遺伝子に変異を誘導できることを示した。さらに効率的な片アレル特異的ターゲティング法も開発した。これらの技術を用いることで、世界に先駆けてヒト病態を模倣するADPKDモデルカニクイザルの作出に成功し、嚢胞形成の進行度によって嚢胞上皮細胞の由来が変化していることなどが示された(Nature Communications, 2019)。2. レポーター遺伝子の組み込み(Tg):piggyBacトランスポゾンシステムを用いたレポーター遺伝子の組み込みの検討を行った。マウス受精卵を用いPBase濃度、ドナーベクター濃度、導入時期について詳細な条件検討を行った。その結果、モザイク性を抑えた均一な蛍光レポーター発現が認められる胚盤胞期胚及び、産子が得られた。現在、カニクイザルへの応用を検討している。3. 新規の遺伝子挿入(KI)技術開発の検討:DNA二本鎖切断と同時に複数の相同組換え関連因子を発現するベクターシステムを構築し、人為的な内在性相同組換え環境の誘導を試みた。マウスES細胞を用いたROSA26遺伝子座への薬剤耐性遺伝子KIによる評価系を用いた検討を行ったが、既存技術と比較し、有意な差は認められなかった。以上のことから、カニクイザルにおけるKOを利用した疾患モデル作出については、基盤となる技術が確立された。Tg及びKIについては今後も総合的な視点から技術開発を継続して行っていく。
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The EMBO Journal
巻: 41 ページ: -
10.15252/embj.2022110815