研究課題/領域番号 |
19K16025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉見 一人 東京大学, 医科学研究所, 講師 (50709813)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CRISPR-Cas3 / マウス / ラット / 受精卵 / All-in-oneプラスミド |
研究実績の概要 |
CRISPR-Cas9の発展により遺伝子改変動物が簡単に作製できるようになった一方、オフターゲットの影響やモザイク個体の作出などの技術的問題や知的財産の問題点がある。最近、我々は新規ゲノム編集ツールType I-E CRISPR-Cas3システムを開発し、ヒト培養細胞の標的配列に変異を導入できることを発見した。本研究課題では、改良型のCRISPR-Cas3を作製し、マウス・ラットの受精卵および生体組織で変異導入効率を検討することで、生体におけるType I-E CRISPR-Cas3の変異パターンの解明とゲノム編集ツールとしての有用性を証明する。 当該年度は、受精卵や生体組織といったin vivoで効率的に機能させるためのツール改良を実施した。具体的には、全因子を発現させるall-in-oneプラスミド、細胞周期依存的発現システム、DNA修復因子共発現システム、AAVベクター用プラスミド等を構築した。現在ヒト培養細胞HEK293TおよびJurkat細胞で変異導入効率を検討している。 これまで開発したCRISPR-Cas3発現プラスミドおよびmRNAについて、エレクトロポレーションもしくはマイクロインジェクションにより受精卵に導入し、ノックアウトマウスおよびラットの作出を試みた。現在までに、毛色遺伝子Tyr、免疫関連遺伝子Il2rgを標的遺伝子として複数回マウスで実施し、ゲノム解析中である。 また組織特異的ゲノム編集を目指し、全身臓器を標的とする血清型AAV9を用いた CRISPR-Cas3発現AAVベクターを作成した。現在、マウス胎児へ静脈投与し、変異導入効率を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規ゲノム編集ツールCRISPR-Cas3の高効率in vivoゲノム改変法の確立を目指し、マウス・ラットを対象に実験を行うことを目的としている。本年度の第一の目標である、改良型CRISPR-Cas3の開発研究については複数の改良型を検討しており、概ね計画通り進行している。また、第二にマウス・ラット受精卵を用いた高効率ゲノム改変研究についても、既にC57BL/6マウスおよびF344ラットにおいて複数回実施して現在ゲノム解析中であり、概ね計画通り進めている。CRISPR-Cas3を用いた組織特異的ゲノム編集研究についても既にAAVベクターを作成済みであり、今後のin vivo評価に向けて準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は受精卵や生体組織といったin vivoで効率的に機能させるためのツール改良を実施した。今後は最も変異導入効率の高いものをヒト培養細胞系の実験によって選抜後、マウスおよびラット受精卵に導入して発現パターンおよび変異導入効率を検討する予定である。またCRISPR-Cas3タンパク質についても合成に成功次第同様の検討を進める予定である。 また、組織特異的ゲノム編集を目指し、CRISPR-Cas3をアデノ随伴ウイルス(AAV)に導入し、マウス生体内でのゲノム編集効率を検討する。すでに全身臓器を標的とする血清型AAV9発現用プラスミドを作成済みであり、マウスへ静脈投与して変異導入効率を検討している。他の血清型、Tet-onシステムとの組み合わせについても順次検討し、各臓器において最適なin vivoゲノム編集法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は11月に大阪大学医学系研究科から東京大学医科学研究所へ異動した。それに伴い、実験計画の変更、特にマウスやラット受精卵の使用数に変更が生じた。これらは次年度に実施する予定である。加えて、新型コロナウイルス感染拡大の影響により複数の出張が中止になったため、旅費の使用がなかった。新型コロナウイルスの終息次第、成果報告に伴るう出張を行う予定である。
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