昨年度、定期的な感染モニタリングおよびその結果を反映した処置を施すことで、「アイソレーターを使用せずにSCIDブタを6か月間飼育する」という本研究の最終目標を達成した。本年度は、飼育実験終了後にサンプリングした組織の病理解析を行った。その結果、大動脈弁および大動脈弁直下の心内膜に細菌感染を伴う疣贅性心内膜炎が認められ、 細菌塊に対する多核巨細胞の出現およびカルシウム沈着を伴う強い炎症が生じていた。飼育期間中、断続的に血液培養が陽性となっており、病理解析の結果はこの血液培養の結果と一致する。 本研究課題で策定した飼育プロトコルを用いることで、アイソレーターを使用せずにSCIDブタを長期間飼育できるようになった。つまり、無菌アイソレーター内で実施することができないような大規模手術を伴う試験にも、SCIDブタを使用することができるようになった。これにより、SCIDブタが新たな前臨床モデルとして、幅広い研究分野の発展に大きく貢献すると考えられる。一方、本飼育プロトコルを用いても細菌感染を完全に予防することは困難だったことから、SCIDブタの飼育は可能な限り無菌アイソレーターを用いて行い、必要に応じて本研究課題で策定した飼育プロトコルを用いて「無菌アイソレーターを使用しない飼育」を行うべきと考えられる。 これらの研究成果の一部は、第68回日本実験動物学会総会 LASセミナー(2021年5月開催、オンライン)において口頭発表した。
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