研究課題/領域番号 |
19K16030
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
塚本 篤士 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (00647175)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 麻酔 / 実験動物福祉 / Refinement / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
本研究では「生育環境とエピジェネティクス」に焦点を当て、まずはげっ歯類の麻酔感受性にかかわるる環境因子を同定する。さらに、麻酔感受性に関連する遺伝子とそのエピゲノム修飾を網羅的に解析することで、麻酔感受性の制御機構を解明し、げっ歯類における麻酔管理の標準化、更には医療分野における麻酔学の進展のための基盤情報を得ることを目的とする。 初年度はマウスを中心に麻酔感受性差と飼育環境の関連性を検討した。同腹のC57BL/6Jマウスを各環境下で飼育した後、イソフルランに対する麻酔感受性について、麻酔導入時間と最小肺胞内濃度(MAC)を指標に検討した。また、周術期の疼痛レベルをRat Grimace Scaleによって評価した。その結果、同居個体の有無やストレスレベルが、麻酔感受性や周術期の疼痛レベルの変動要因となることが明らかとなった。 次に、ラットにおいて同居個体とのインタラクションが麻酔感受性や周術期の疼痛に及ぼす影響を検証した。その結果、同居個体の存在によって麻酔や疼痛に対する感受性が変化することが明らかとなり、それには個体間における痛覚の同期化、すなわち痛みの情動伝染が関連することが示唆された。その他、ラットにおいて個体ごとの麻酔感受性差が比較的少ない新しいバランス麻酔を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は目標としていた麻酔感受性と環境因子の関連性を明らかにすることができた。しかしながら新型コロナウィルスの影響で実験を延期したことにより、2019年度末から2020年度初頭に行う予定だった一部の実験の実施時期が、2020年度夏にずれ込む見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きマウスにおいて環境因子と麻酔感受性の関連性を検証する。麻酔感受性に関連する環境因子の特定が完了した後、顕著な麻酔感受性差が認められた個体間のサンプルにおいて、DNAのメチル化領域を比較する。さらに、DNAのメチル化の変化が認められた領域の近傍遺伝子について、mRNA発現量の変化を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた研究の一部を延期したため、残予算を次年度に繰り越すこととした。
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