研究課題/領域番号 |
19K16031
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
関 布美子 公益財団法人実験動物中央研究所, ライブイメージングセンター, 研究員 (40771407)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マーモセット / MRI / 可塑性 / 発達 |
研究実績の概要 |
子どものニコチン依存に対する脆弱性は顕著であるが、その理由として発達期の脳は成体より脆弱性が高く、言い換えれば可塑性が高いためと考えられる。しかしマーモセットの発達中の脳が可塑性が高いか否かは定かではない。そこで通常ケージと広い飼育室と異なる環境で育った個体の脳発達をMRIで経時的に計測し、脳発達に違いがあるか検証した。 全ての領域が環境の相違に応じて変化したのではなく、12か月以降に体積が顕著に減少する脳領域で特に体積の減少が著しかった。発達後期の脳は可塑性が高く、一方で脆弱性も高い発達期間であることが明らかになった。このことから発達時期や脳領域によって、刺激による脆弱性が変化する可能性がある。体積の発達曲線の傾向からは、手綱核といった領域は体積増加後は減少せず、一方前頭前野は9か月ほどまで増加後減少することから、前頭前野等では脆弱性が高めである可能性が示唆された。 またハード面の整備として、マーモセットにおける覚醒下の安静時fMRIの撮影は昨年度までに可能になったが、信号雑音比が十分ではなかった。その対策として新たにfMRI用の頭部固定具と受信コイルが統合された頭部ヘルメットを開発した。 コイルの形状をマーモセットの平均的な頭部形状に合わせるため、約20頭の頭部画像を用いて平均な頭部のヘルメットを作製した。マーモセットは頭部の形態に個体差があるが、複数の個体に着用させて汎用性の高いヘルメットであることを確認した。このヘルメットにコイルのパーツをとりつけ、脳全体の信号雑音比が上昇できるようにした。 このコイルの開発・適用により信号強度が上昇したためこれまでにマーモセットで報告されている脳内ネットワークを検出することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各発達段階において可塑性の高さが異なることを明らかにした。脳領域毎に描出した体積の発達曲線においては、大脳皮質で体積の増加のち減少に転じる。減少した初期の頃に特に可塑性が高いことがわかった。 安静時における脳活動のMRIを複数個体に実施し、健常個体で脳結合性ネットワークを描出できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
まずマウスにおいて局所的な神経抑制化手法を確立する。 その後マーモセットにおいてもその手法を適用し、手綱核-脚間核間の神経活動を操作させた際の脳活動をfMRIで計測する。若齢個体 (12ヶ月齢) で実施し、その後縦断的な計測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響によって研究の実施や報告が滞った。 実験の実施に必要な備品や消耗品に来年度は充てる予定である。
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