研究課題/領域番号 |
19K16035
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
八代 龍 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 ラジオアイソトープ管理室, リサーチフェロー (70838119)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | DMD / ネクロトーシス / アポトーシス / MLKL / RIPK3 / カスパーゼ |
研究実績の概要 |
平成31年度(令和元年度)より、研究代表者は新たな研究機関に異動し、若干の研究テーマ変更の必要性が生じた。本研究では現在、ネクロトーシス経路を中心に検証を行なっているが、余裕があればトランスポゾンとの関連も検証していく予定である。 平成31年度(令和元年度)は、マウス横紋筋細胞株C2C12を用いて、主にネクロトーシス経路に関連するタンパク質を調査し、その発現を検証した。幸いなことに、研究代表者が所属する研究室では、ジストロフィンをCRISPR/Cas9系でノックアウトし、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を模倣するC2C12細胞の作製に成功している。代表者はそれを用いて検証を行った。 2018年の報告で、DMDにおいて過酸化水素水で酸化ストレスをかけると、ネクロトーシス関連タンパク質の発現上昇が認められた(Morgan et al, 2018)。 そこで本研究では、まず、酸化ストレスに対するネクロトーシス系のタンパク質、MLKL、p-MLKL(S345)の発現変動の検証を行った。具体的には、過酸化水素水とカスパーゼを阻害するzVADを添加し、実験を行った。100μMの過酸化水素水を培地に添加した時、ネクロトーシス活性化の指標であるp-MLKLの発現は認められなかった。これは過酸化水素水の濃度が濃すぎて、細胞自体が壊れてしまったためと考えられた。次に1μM、10μM、20μMの各濃度で検証したところ、それぞれp-MLKLの発現が認められた。面白いことに、DMDを模倣したC2C12において、過酸化水素水とzVADを用いた場合のみ、p-MLKLの有意なシフトダウンが認められた。 次年度はこのシフトダウンの原因は何か、そしてそれがDMDへどのような影響を与えるのかについて、引き続き検証していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は平成31年度(令和元年度)より、現在所属している研究室に異動した。そのため、完全にではないが、若干のテーマ変更が生じた。本研究のテーマとの関連を模索しながら研究を遂行している。 酸化ストレスをかけた状態でのネクロトーシス系タンパク質の発現を解析した。その結果、DMD模倣細胞株において、アポトーシスを阻害した状態で酸化ストレスをかけた時にのみ、ネクロトーシスの指標であるp-MLKLのバンドシフトダウンが認められた。この解析は、DMDとネクロトーシス、酸化ストレスの関係性を深める結果と期待できる。しかし、それ以上の有意な結果は現状得られておらず、次年度はより加速して研究を進めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
完全に継続した研究ではないのにもかかわらず、1年で糸口を見つけるに至った。次年度はその「シフトダウン」について、MS解析によって同定したい。おそらくは脱リン酸化がおこっていると思われるので、フォスファターゼの同定、さらにはネクロトーシスとの関わりやジストロフィンとの関連を模索し、DMDとの関係性を考察したい。さらに、ジストロフィンの有無でのネクロトーシスと関連するタンパク質の違いを探索し、トランスポゾンや種々のシグナル経路との関わりなど、何らかの関係性を見出したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
技術補佐員を1人雇い、研究を加速させる予定であったが、思いの外研究用品の費用がかさんだことで計画に狂いが生じた。また、研究の進行が当初の計画より遅れたことで学会発表等ができず、旅費の使用がなかった。他方、研究用品は必要が生じた時に、適宜本研究費を使用するため次年度繰越し金が生じてしまった。なお、「その他」の欄については、海外インターネットサイトで個人購入した研究用品の立替払いに使用した。
|