• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

ゲノム構造Rループ形成のエピトランスクリプトミクス制御

研究課題

研究課題/領域番号 19K16037
研究機関東京理科大学

研究代表者

岡田 俊平  東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (40838372)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードRループ / DNA:RNAハイブリッド鎖 / 核酸修飾
研究実績の概要

本研究ではゲノム上に存在するDNA:RNAハイブリッド鎖と一本鎖DNAから構成されるRループ形成領域を高精度且つ高感度に検出する新規解析技術を開発し、哺乳動物ゲノムにおけるRループ構造形成部位の同定並びにその役割の解明に資する解析技術基盤の構築を目的とする。さらに核酸塩基修飾の観点からRループ構造制御に関与する因子の同定を行い、その分子機構の解明並びに細胞内機能、生物学的意義にについて明らかにすることを目指す。申請者らはこれまでに、主にRNAに作用すると考えられていたRNA修飾酵素がDNA:RNAハイブリッド鎖にも選択的に結合して細胞内Rループ形成の制御に関与することを見出し、この制御機構がヒトゲノムの安定化へ寄与することを示唆する結果を得ている。さらなる詳細な分子機構を解明するため本研究の初年度は、RNA修飾酵素がDNA:RNAハイブリッド鎖中に導入している核酸塩基修飾部位を同定するため、対象の核酸修飾に特異的に反応し、濃縮精製に有用な官能基付加が可能である化学試薬の探索を行った。その結果、対象の核酸修飾特異的に反応する化合物を一種類、見出すことに成功した。試薬濃度及び反応時間の最適化を図った結果、約15倍のシグナルノイズ比を示す反応条件を見出した。また核酸の濃縮が可能なビオチン官能基が付加された化合物を用いて核酸修飾を有する合成核酸を濃縮精製化学合成により核酸修飾が導入された合成核酸を反応させて特異的な濃縮精製の可能性について検証を行った。その結果、未修飾の場合と比べて修飾塩基を有する合成核酸は3倍以上の高い濃縮効率を示す結果が得られた。以上の成果は、本研究で見出した化学試薬をゲノムサンプルへ発展応用することで対象の核酸塩基修飾を有するDNA:RNAハイブリッド鎖を特異的に濃縮可能であること示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

核酸修飾に対する反応が全く未知の化合物であったため、化学反応の検出方法の確立、反応濃度及び反応時間の範囲の把握に時間を要した。また核酸修飾塩基に対する反応特異性の検証について生化学的手法を駆使して実行していたが反応副産物の除去が困難であり、また異なる塩基種類間で塩基の存在量を示すシグナルが一様に揃わないなどの問題により明瞭な結果が取得できず、解決に至るまで時間を要した。そのため、逆相HPLCを用いた解析に方針転換を行い、反応産物と未反応物を分離する移動相の条件検討を重ねている。初年度内に細胞内から抽出されてゲノム及びRNAサンプルに対して本化合物を応用して核酸修飾を有する領域を濃縮する方法の検討を開始する予定だったが現状ではその段階に至っていない。以上の理由により、現在の進捗状況は当初の予定よりもやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

本研究で見いだされた化合物をまずは核酸修飾部位が同定されているヒトRNAに応用し、核酸修飾を有する領域の濃縮率を指標に化学反応や濃縮方法の検討を行う。その条件を整えた上で、さらにヒトゲノムサンプルへ適用し、人為的に混合した核酸修飾を有する合成核酸の濃縮率を基準にして核酸修飾を有するDNA:RNAハイブリッド鎖の濃縮を試みる。得られたDNA:RNAハイブリッド鎖サンプルに対してイルミナ及びナノポアシークエンサーを用いたRNAシーケンシングを実施し、RNA鎖中の核酸修飾部位の網羅的な同定を行う。検出された修飾塩基部位とRNA修飾酵素による制御を受けるRループ構造領域との重複を解析し、各修飾部位がそれぞれのDNA:RNAハイブリッド鎖内の塩基対形成に与える影響から核酸修飾依存的なRループ制御の詳細な分子機構に迫る。また技術的特徴の異なる両シークエンサーの結果を活用しながら核酸修飾を有するRループ領域の塩基配列及びゲノムの位置上の特徴を調べ、ゲノム安定化に寄与する特徴的要素を探求する。

次年度使用額が生じた理由

初年度においては化学試薬を反応させる基質として合成核酸を使用をしており、培養細胞からの核酸サンプル抽出精製に必要な生化学試薬の費用が生じていない。また本研究で予定しているイルミナ及びナノポアシーケンシングのライブラリ調製やシーケンシングに必要な試薬は非常に高価な上に使用期限が限られているためサンプル精製の条件確立の見通しが立つまで購入を控えている。さらにサンプル精製の条件が決定していないため費用が高額なシーケンシングの実施にも至らなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Discovering A-to-I RNA Editing Through Chemical Methodology “ICE-seq”2020

    • 著者名/発表者名
      Sakurai, M., Okada, S., Ueda, H., and Yang, Y.
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 2181 ページ: in press

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-0787-9_8

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi