研究課題/領域番号 |
19K16052
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井澤 俊明 東北大学, 薬学研究科, 助教 (60837871)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 新生ポリペプチド鎖 / 品質管理 / リボソーム |
研究実績の概要 |
リボソームの異常停止によって作られる不完全なタンパク質はリボソーム関連品質管理(RQC)の標的となる。RQCによるタンパク質の品質管理はプロテオスタシスの維持に重要な役割を担う。本研究では、RQCにおける異常タンパク質へのユニークな修飾機構であるCATテイリングの解析と、RQCの内在性標的配列を持つTrq1の生理的意義について解析を行っている。 本年度はまず、ミュンヘン大学Roland Beckmann教授との共同研究により予め取得していたVms1の構造と生化学的結果に基づき、Vms1によるCATテイリング制御に関する論文の作成と投稿を行った。次に、Vms1のtRNA相互作用部位である285番目のチロシン残基に着目した解析を行った。細胞抽出液からVms1-60Sリボソーム複合体を精製し、そこに結合するtRNAを解析する実験系を確立した。この系を用いて解析を行ったところ、Vms1(Y285A)変異体ではCATテイリングに使われるAla(AGC)-tRNAが顕著に蓄積することがわかった。このことから、Vms1の285番目のチロシンがin vivo において60SリボソームからのAla(AGC)-tRNAの解離に必要であることが示唆された。 次に、RQCの内在性標的配列を持つタンパク質Trq1の機能解析を行った。Trq1はミトコンドリアタンパク質の輸送に異常を示す変異体の生育阻害のマルチコピーサプレッサーとして機能することが報告されている。そこでミトコンドリアタンパク質の前駆体の蓄積を指標にし、Trq1がミトコンドリアタンパク質の輸送の異常を回復させるかを解析したが、回復は認められなかった。次に、Trq1の細胞内局在を調べたところ、RQCの機能低下により安定化し、核に局在することを見出した。今後は、Trq1が核に局在することを手がかりに、その機能解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予め得られていたVms1-60Sリボソームの構造情報に基づいて、Vms1の構造と機能に関する論文をまとめ、出版することができた。また、Vms1-60Sリボソームを細胞抽出液から精製し、そこに結合するtRNAを解析する実験系を確立した。この系を用い、Vms1の285番目のチロシンが60SリボソームからのAla(AGC)-tRNAの解離に必要であることを示すことができた。 RQCの内在性基質であるTrq1に関しては、その機能については未だ不明であるものの、核に局在するという重要な手がかりを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoにおいて、Vms1の基質となるtRNAに選択性があるかは明らかとなっていない。そこで、これまでに確立したVms1-60Sリボソーム精製系を用い、Vms1(Y285A)-60Sリボソーム複合体に蓄積するtRNAを、各種tRNAに特異的なプローブを用いてノーザンブロットにより解析する。 また、Vms1(Y285A)-60Sリボソーム複合体とともに精製されるAla(AGC)-tRNAは、完全長に加え、分子サイズの小さくなった断片も含まれていた。この結果から、Vms1のY285以外の残基、または他の因子がAla(AGC)-tRNAの切断に関与する可能性が考えられた。そこで本研究では、この切断に関与するVms1のY285以外の残基や他の因子について検証を行う。 RQCの内在性基質であるTrq1に関しては、RQCの機能が低下すると安定化して核に局在することを見出している。これを手がかりとし、Trq1の機能について引き続き解析を行う。
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