研究実績の概要 |
翻訳の失敗によって作られる異常なタンパク質はリボソーム関連品質管理(RQC)の標的となる。本研究では出芽酵母を用い、RQCにおける異常タンパク質へのユニークな修飾機構であるCATテイリングの分子機構の解析と、RQCの内在性の標的配列を持つTrq1の生理的機能の解析を行った。 CATテイリングの制御機構についてはまず、あらかじめ取得していたVms1-60Sリボソーム複合体の構造解析の結果に基づき、tRNA切断因子Vms1によるCATテイリング制御に関する論文作成を行った。次にVms1とtRNAとの相互作用領域に着目し、CATテイリングの制御に必要なVms1の活性領域の詳細な解析を行った。Vms1-60Sリボソームを細胞抽出液から精製し、そこに含まれるtRNAをノーザンブロットにより解析したところ、Vms1のY285A, G295L変異体において、Ala(AGC)-tRNAが顕著に蓄積する様子が観察された。一方、それ以外に調べたtRNAでは蓄積が観察されなかったことから、Vms1はin vivoにおいて、1) Y285AとG295Lを介してAla(AGC)-tRNAを選択的に切断していること、2) この活性がCATテイリングの抑制に重要であることが示唆された。 RQCの内在性標的配列を持つTrq1は通常、RQCによって恒常的に分解されているが、RQCの機能低下により安定化する。本研究では、RQCの機能低下によりTrq1が安定化して核に局在することを見出した。先行研究により、Trq1はテロメアの長さに関与することが示唆されていたため、Trq1の欠損細胞においてテロメアの長さの解析を行ったが、野生株と比べて変化は観察されなかった。現在までにTrq1の機能解明には至っていないものの、RQCの機能低下によって核に蓄積することから、Trq1の機能を解析する上での手がかりを得ることができた。
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