シアノバクテリアの概日時計を駆動する時計タンパク質KaiCは、試験管内においても24時間周期の化学反応を織りなす。KaiCはATP加水分解と自己リン酸化/脱リン酸化というふたつの機能を有するが、こうした化学反応の速度は地球の自転に対応しているために、太古のKaiCが復元できれば地球自転周期の歴史を明らかにすることができる。本研究課題では以下の3点について研究を進めている。(1)系統樹に基づき各年代の祖先型KaiCを復元する、(2)祖先型KaiCのATP加水分解反応や自己リン酸化/脱リン酸化反応を測定する、(3)祖先型から現生型KaiCに至る活性部位の立体構造を解明する。
2019年度は(1)、(3)の項目について進展があった。まず(1)について祖先型KaiCの配列推定に供するため、200種を超える現生シアノバクテリアのKaiC配列を収集した。これらの系統樹を作成し、分岐点における祖先型KaiCのアミノ酸配列を推定することが可能となった。次に(3)については複数種のシアノバクテリアに由来する現生型KaiCの結晶化条件を探索した。系統樹で同じグループに属するKaiCの活性部位の構造は互いに非常に似通っていることが判明し、祖先型KaiCの結晶化に向けて一歩前進した。2020年度は、(2)へ研究を進める計画となる。そのために(1)で得られる系統樹の再現性や未知の配列試料が出現した際の頑健性などを定量的に把握し、最善と判断される系統樹に基づいて(2)へと研究を進める。
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