GAS41は主に核内に存在し、構成ドメインのYEATSドメインが基質であるアセチル化修飾ヒストンを認識することにより、転写因子複合体やクロマチンリモデリング因子複合体をクロマチンにリクルートし転写を制御している。本研究では、GAS41とアセチル化ヌクレオソームの複合体構造を明らかにし、GAS41によるアセチル化ヒストンの基質分子認識機構を解明することを目的とした。 構造解析のためのGAS41大量発現系の構築と、ヒストンH3アセチル化ヌクレオソームの大量調製法を確立した。GAS41とH3アセチル化ヌクレオソームの複合体から得られた単結晶は8Åの分解能で、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析では7Åの分解能であり構造決定には至らなかった。そこで、ヌクレオソームを構成するアセチル化ヒストンとGAS41の複合体の構造基盤をX線結晶構造解析により解明した。GAS41はアセチル化リジンが結合する芳香族アミノ酸で構成される疎水性ポケットとは別に相互作用領域が存在し、二つの結合領域でアセチル化ヒストンと相互作用していた。二つの結合領域に存在する相互作用残基の変異体を作製し、生化学的・物理化学的手法によりアセチル化ヒストンへの結合に重要な残基を同定した。また、その同定残基が細胞内でアセチル化ヒストンの認識に関わっていることを示すため、GAS41のKD細胞に変異体GAS41を導入した細胞を作製し、qPCRにより標的遺伝子のmRNA量を定量した。qPCRの結果から、結晶構造中の相互作用残基が細胞内でのアセチル化ヒストンの認識・転写制御に関わることを明らかした。
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