O-マンノース型糖鎖は筋細胞の安定化に必須なタンパク質結合型糖鎖である.筋細胞の代謝において,O-マンノース型糖鎖がどのように分解されているかは未知である。本研究では壊死筋細胞の分解機構の解明を目的として,1. O-マンノース型糖鎖および誘導体の化学酵素合成法を確立し,これらを用いて2. 未知酵素 “O-マンノース型糖鎖分解酵素”の探索と酵素学的性質の解明および細胞内での時間・空間的な局在解析を行う計画であった。 2021年度は, 前年度までに発見した「α-マンノシル基転移反応を触媒する酵素」について様々な反応条件検討を実施したが,O-マンノース型糖鎖および誘導体の化学酵素合成には至らなかった。一方で,本酵素にある種の部位特異的変異を導入することで,これまでに報告のない多様な配糖体を合成することを発見した。本酵素については現在特許の出願を準備している。 また,その他の糖質加水分解酵素の構造機能研究を実施し,この糖質加水分解酵素とその類縁酵素群において縮合反応(すなわちオリゴ糖合成反応)に重要なアミノ酸残基を同定し,論文発表した。また,既報の基質特異性にとらわれずに,多様な既知および新規の糖質加水分解酵素や,構造機能相関に関する知見が乏しい溶質結合タンパク質についてもO-マンノース型糖鎖との関連について調査した。これらの酵素はO-マンノース型糖鎖の合成反応は触媒しなかったものの,糖質関連タンパク質による糖合成反応や糖認識機構を理解するための基盤となる新たな知見を見出す成果となった。 さらに,O-マンノース型糖鎖に作用することが期待される酵素遺伝子をラット由来cDNAライブラリーから新たにクローニングし,これらの組換え酵素生産系を構築するとともに,部位特異的変異酵素も作成した。これらの酵素活性については現在調査中である。
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