生命現象の根幹であるタンパク質合成を担うリボソームはその立体構造こそ解明されたが、機能および生合成過程は極めて複雑であり、その全容は未だ不明瞭である。これまでに研究代表者らは、リコンビナントタンパク質として精製したリボソーマルタンパク質とリボソーム生合成因子を用いたリボソームの試験管内再構成系を確立し、生合成因子が生理的条件下での効率的な再構成に必要であることを報告している。本研究では、それらの系の発展や関連した研究からリボソーム生合成過程に焦点をあてて研究を進める。特に、非生理的な環境が生合成過程に及ぼす影響に着目している。それらの生合成過程の理解は、リボソーム生合成過程のシステムとしての並列性・頑健性を理解するのに重要であるだろう。さらに本研究においては、研究代表者らが確立させた試験管内再構成系の発展に取り組んでいく。系の発展は、リボソームの理学的研究のためのツールとしての有用性と簡便性の向上させるだけでなく、選択と変異によるリボソームの人工進化実験に使用可能な強力なツールとなることが期待される。 本年度は、昨年度から継続して、リボソーム試験管内再構成系や無細胞タンパク質合成系を用いて、多様な条件下でのリボソームの試験管内再構成および機能検証を行った。特に生合成異常が起きた際の生合成因子とリボソーマルタンパク質の役割に着目して研究を進めた。また、モデル生物以外のリボソーム関連因子や種々の小分子環境条件に着目した研究を進めている。
|