本研究では、酵母がグルコース枯渇環境に適応する際、自身の増殖をも阻害する作用を持つ複数のストレス物質を環境中に分泌することが見出された。つまり、酵母は飢餓ストレスに適応するだけでなく、さらに別の複数の物質を分泌することで、より複合的な「飢餓+毒」というストレス環境を作り出していた。自らの増殖を抑制する物質の分泌は、生存には一見不利に思われる。だが、実際には、飢餓環境へ適応した酵母は、増殖阻害物質群への耐性も示した。これらの結果から、酵母の分泌する阻害物質は成長の阻害と同時に、 飢餓への適応を促進することで、自らのリネージに有利な環境を作り出している可能性が示唆された。
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