研究課題
EGF受容体は、上皮系や神経系などの細胞膜表面に発現する受容体型チロシンキナーゼである。上皮成長因子(リガンド)は EGFRに結合するこ とで、EGFRの2量体形成が誘発され、EGFRシグナルが惹起される。興味深いことに、EGFR に結合するリガンドの種類によって、EGFRシグナルの量的違いだけではなく質的違いも生じていることが報告された。即ち、EGFがEGFRに結合した場合は一 過性に強いシグナルが下流に伝達されて MCF-7細胞が増殖するのに対して、Epiregulinが結合した場合には持続的に弱いシグナルが伝達されて MCF-7細胞が 脂肪細胞様に分化転換する。しかし、EGFRシグナルの強度は、リガンドを分泌するガン細胞ごとに多様性があるので、EGFRリガンドの性質を制御する未知の因 子がある可能性が高いことが示されている。 そこで本研究では、EGFRリガンドの性質を制御する未知の因子を解析することを目的した。その結果、EGFRリガンドに、ガン細胞ごとに特徴的なパターンを示す因子の存在を質量分析装置を用いた解析で見出した。また、それぞれの特徴的なパターンを示す因子の生化学的・細胞生物学的機能アッセイを実施した。その結果、ある癌細胞株由来のEGFRリガンドでMCF-7細胞を刺激すると、MCF-7は分化転換せず、細胞は増殖した。この結果から、EGFRリガンドに存在する因子は、細胞の運命決定を司る可能性が示された。当初、大腸菌にてリコンビナントEGFRリガンドの作成を予定していたが、不溶性となり高純度で精製することが困難であった。そこで、ペプチド合成にてリコンビナントEGRFリガンドを合成する方針に転換した。その結果、ペプチド合成にて高純度のリコンビナントEGRFリガンドの合成に成功した。現在、NMRやX線構造解析、細胞によるバイオアッセイで機能解析を実施している。
3: やや遅れている
当初、大腸菌にてリコンビナントEGFRリガンドの作成を予定していたが、不溶性となり高純度で精製することが困難であった。そこで、ペプチド合成にてリコンビナントEGRFリガンドを合成する方針に転換した。その結果、ペプチド合成にて高純度のリコンビナントEGRFリガンドの合成に成功した。現在、NMRや X線構造解析、細胞によるバイオアッセイを用いて糖鎖の影響を精査している。また、コロナ禍で在宅任務をやむなく実施したため。
ペプチド合成したリコンビナントEGFRリガンドの糖鎖の有無による機能を構造学的なアプローチから更に詳細に解析をする。同様に、細胞を用いたバイオアッセイにより生物学的な意義を更に詳細に解析したい。
コロナの為、研究が中断した為。構造生物学的アプローチによる機能解析を進める。
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