研究課題/領域番号 |
19K16076
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松久 幸司 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (60735299)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 核膜ストレス / OASIS |
研究実績の概要 |
本研究課題では、小胞体局在型転写因子OASISがDNA損傷などの刺激に応答して形成される核ブレブに移行する詳細な分子機構およびその生理的意義を明らかにすることを目指している。2019年度は、以下のことを明らかにした。1) これまで細胞にDNA損傷を与えた時に形成される核ブレブのみでOASISの集積が観察されていたが、細胞に圧力を負荷して細胞核に物理的刺激を加えることで形成させた核ブレブにもOASISが集積する現象が認められた。このことからOASISの核膜集積はDNA損傷特異的ではなくある程度広範な核膜損傷に対して起こる現象であることを明らかにした。2) OASISが核膜集積するために必要なドメインを明らかにするために様々なOASISのドメイン欠損体シリーズを作製して解析した。まずはOASISタンパク質の細胞質領域あるいは小胞体内腔領域を核膜に集積しないOASISファミリー分子であるLumanに置換したスワップ変異体を作成した。作成したスワップ変異体のDNA損傷を与えた細胞における細胞内局在を解析したところ、OASISのN末端側細胞質領域が核ブレブへの集積に必要な事が分かった。さらに、既に知られてるOASISの細胞質領域に存在する各種ドメインをN末端側から段階的に欠損させた変異体シリーズを作製して同様に解析したところ、OASISのN末端側細胞質領域のうち複数の箇所が核膜への集積に必要であることを見出した。OASISのN末端側に存在する複数の領域に何らかの分子が相互作用することで、OASISが核ブレブに移行していると考えられる。3) 核膜損傷時にOASISと相互作用する分子をプロテオーム解析により調べたところ、核膜再構成に関与することが知られている核内膜局在タンパク質LAP2βをはじめとする複数の内膜タンパク質を同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小胞体局在転写因子OASISについて、DNA損傷以外で形成された核ブレブに対する細胞内局在の変化や、局在変化に対して寄与しているドメインおよび相互作用している物質の候補を同定できたため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は核ブレブにおいてOASISと共に集積する核膜修復関連因子の同定やOASISと核膜分子による相互作用の詳細および生理的意義について解析を進める。また核膜病とOASISとの関連を模索するために、核膜病の一つである早老症の原因分子プロジェリンの発現マウスとOASIS欠損マウスを交配して現れる形質を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使途の定めのない経費を使用することにより、2019年度の所要額が想定よりも抑えられたため。今後の実験には細胞の培養に用いるプラスチック器具を大量に必要とするため翌年度分として請求した助成金とともにそれらに充当する。
|