研究課題/領域番号 |
19K16083
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
矢野 直峰 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 産学官連携助教 (60724721)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 単結晶中性子構造解析 / 長格子 / 強度分離法 / データ処理法の開発 / 飛行時間法 / タンパク質 / iBIX |
研究実績の概要 |
タンパク質単結晶用中性子回折装置iBIXは格子長の1辺が135Åを超えた場合、一部の回折斑点が重なり、強度を決定できないという問題が生じるので、測定対象を拡大するために強度分離法の開発を行った。重なった回折斑点の個々の強度を決定するために、プロファイルフィッティング法を応用することにした。今年度は(1)バックグラウンド関数決定方法の検討、(2)個々の回折斑点で重なりの有無を判断する手順の開発、(3)横軸TOFの1次元強度分布において重なりの無い領域を判断する手順の開発、(4)強度決定可能な重なり具合の検討、(5)データ処理ソフトへの実装を想定した試作プログラムの開発に着手した。(1)では中性子の波長が短くなる程、TOF方向で回折斑点の間隔が密になり、重なってくることから、積分領域のXY平面毎にバックグラウンドを決定し、横軸TOFの1次元強度分布のバックグラウンド関数を決定することにした。(2)と(3)では個々の回折斑点の積分領域とバックグラウンド領域の検出器上でのピクセル座標を基に重なりの判定を行うことにした。対象とする回折斑点の積分領域が隣接する回折斑点のバックグラウンド領域に入っていた場合、重なっていると判断し、重なった領域はフォワーグラウンド関数のフィッティングには使用しないことにした。(4)ではUB行列から予測したピークトップ位置まで重なっている場合、フォワーグラウンド関数を最小二乗法でフィッティングすることが出来ないので、強度決定は不可能と判定することにした。予測したピークトップ位置が横軸TOFの1次元強度分布のピークトップ位置とズレることも考慮して、判定することにした。(5)では(1)から(4)で確立した手順を含めた試作プログラムを作成中である。格子定数がa=b=c=133Åで、分解能が2.4Åのカタラーゼの回折データを用いて、手順の有用性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)バックグラウンド関数決定方法の違いにより、データの統計値にどのような差が出るのかを調べた。これまでプロファイルフィッティング法で採用していた横軸TOFの1次元強度分布においてバックグラウンド関数を決定する方法と積分領域のXY平面毎にバックグラウンドを決定し、横軸TOFの1次元強度分布のバックグラウンド関数を決定する方法で比較した。iBIXで測定した3つのタンパク質の回折データで比較したところ、バックグラウンド関数決定方法の違いによって、反射数、I/σ(I)、Rmergeといったデータの統計値にはあまり差が無いことが分かった。強度分離法において、積分領域のXY平面毎にバックグラウンドを決定し、横軸TOFの1次元強度分布のバックグラウンド関数を決定する方法を採用することにした。1年目の計画を達成することが出来た。 (2)計画では2年目に行う予定であった項目(個々の回折斑点で重なりの有無を判断する手順の開発、横軸TOFの1次元強度分布において重なりの無い領域を判断する手順の開発、強度決定可能な重なり具合の検討、データ処理ソフトへの実装を想定した試作プログラムの開発に着手)を1年目に行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した強度分離法が実現可能な試作プログラムを完成させる。カタラーゼの回折データに適用し、手順に問題がないか検討する。試作プログラムが完成したら、iBIX用のデータ処理ソフトSTARGazerへの実装を行う。実装は専門のソフト開発会社に依頼し、ユーザーがGUIから容易に利用出来るようにする。納品されたソフトの動作確認を行い、動作に不具合がないか確認する。マニュアルを作成し、ソフトと共にユーザーがwebからダウンロード出来るようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、国際学会に科研費以外の研究費を用いて参加出来ることになったから、である。 使用計画は2020年度におけるデータ処理ソフトへの実装費用などに用いる予定である。
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