茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARC内に設置されているタンパク質単結晶用中性子回折装置iBIXは格子長の1辺が135Åを超えた場合、測定波長と散乱角2θによっては一部の回折斑点が重なり、強度を決定出来ないという問題が生じる。そこで、iBIXの測定対象を拡大するために回折斑点の強度分離法の開発を行った。格子定数がa=b=c=133Åの単結晶の回折データを用いて方法を検討したところ、プロファイルフィッティング法を応用した方法を採用することにした。中性子の波長が短くなる程、波長軸方向で回折斑点の間隔が密になり、重なってくる。そこで、積分領域のXY平面毎にバックグラウンドを決定し、横軸波長の1次元強度分布を作成した後、バックグラウンド関数を決定することにした。積分対象とする回折斑点の積分領域が隣接する回折斑点の積分領域またはバックグラウンド領域に入っていた場合、重なっていると判断し、重なった積分領域はフォワーグラウンド関数のフィッティングには使用しないことにした。積分対象とする回折斑点のピーク中心が隣接する回折斑点の積分領域またはバックグラウンド領域に入っていた場合、強度決定は不可能と判定することにした。 開発した方法はユーザーが利用出来るようにiBIX専用のデータ処理ソフトSTARGazerへの実装を行った。実装はこれまでデータ処理ソフトの開発に関わってきたソフト開発会社に依頼し、グラフィカルインターフェース上で使用出来るようにした。納品されたソフトの動作確認を行い、不具合なく動作することを確認した。マニュアルを作成し、ソフトと共にユーザーがwebからダウンロード出来るようにした。
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