研究課題
シアノバクテリアが有する生物時計機構は3つの蛋白質KaiA・KaiB・KaiCで構成され、KaiCはKaiA、KaiBと相互作用しながらリン酸化度を24時間周期で増減させる。この興味深い生物時計機構の理解のためには、KaiCの溶液中の構造を理解することが重要である。本研究では、溶液中のKaiCの三次元構造を解明することを目的とした。溶液中のタンパク質の構造解析のために小角散乱法は大変強力な手法だが、測定により得られる散乱プロファイルは凝集等の夾雑物に敏感に影響を受ける。そこで前年度開発したAUC-SAS法を用いて、凝集の影響が完全に排除されたKaiC 6量体のSAXSプロファイルを得た。このSAXSプロファイルを結晶構造から予想される散乱プロファイルと比較したところ、溶液中における回転半径は結晶構造のものと比較して大きいことがわかった。溶液中での構造を明らかにするため令和2年度は、AUC-SAS法によって得られたSAXSプロファイルを再現する構造モデルを粗視化分子動力学シミュレーションを用いて探索した。その結果、結晶構造では観測されていなかったN末端およびC末端側の天然変性領域を考慮したモデルがSAXSプロファイルを最もよく再現することが明らかとなった。また、これらの両末端は溶液中でランダムに揺らいでいることが示唆された。特にC末端の天然変性領域はリン酸化に寄与するKaiAとの相互作用部位であり、現在未解明であるKaiA-KaiC複合体の構造解析を今後行うにあたり重要な知見である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 2555
10.1038/s41598-021-82250-z
Biophysics and Physicobiology
巻: 18 ページ: 16-27
10.2142/biophysico.bppb-v18.003
巻: 11 ページ: 5655
10.1038/s41598-021-85219-0
The Journal of Biochemistry
巻: 170 ページ: in press
10.1093/jb/mvab012
Communications Biology
巻: 3 ページ: 294
10.1038/s42003-020-1011-4
巻: 10 ページ: 21678
10.1038/s41598-020-78311-4