研究課題/領域番号 |
19K16089
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
外間 進悟 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (00757635)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノダイヤモンド / 量子センサー / 化学修飾 / 細胞 / 温度 |
研究実績の概要 |
細胞と温度の関係を理解するためには、細胞内のどの部位が温度を感知する役割を担うのか、また細胞内の特定部位を温めた時、細胞がどのような応答を示すのかを解明する必要がある。蛍光性ナノダイヤモンド(FND: fluorescent nanodiamond)は近年ナノ領域の温度を定量的に計測可能なセンサーとして注目されている。本研究ではFNDの粒子間でのばらつきを低減するために空気酸化並びに化学コーティングによる球形化、金ナノ粒子(GNP)とのハイブリッド化、および細胞内移行を促進するためのカチオン化を試みた。その結果、①均一な構造を有するFND-GNPハイブリッドの合成に成功。②GNPから光照射によって発せられる熱をFNDで1℃の精度で検出するシステム、すなわちナノヒーターと温度計が一体となったシステムの開発に成功した。FND-GNPハイブリッドは繰り返しの光照射によってもその構造が壊れることはなく安定であった。 ③上記したFND-GNPハイブリッドの表面をさらにポリグリセロールポリマーで修飾することによって、分散性と細胞内移行をコントロールすることに成功。また凝集に対する安定性が非常に高く、塩を含む溶液中であっても24時間分散可能なほど高い凝集耐性を示した。④最後に 生きた細胞内において、ナノ領域の発熱ー温度計測システムが作動するか検証を行った結果、細胞内であっても1℃の精度で発熱がコントロール可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では粒子径100 nmのFND表面に、HAuCl4を還元させる手法を用いて金ナノ粒子(GNP)を結合させた。その結合は電子顕微鏡により確認した。FNDによる温度計測とGNPによる発熱を532 nmのレーザーで同時に行ない、各レーザー強度におけるODMRスペクトルを取得し、共鳴周波数(D)をプロットしたところ、レーザー強度の増加に伴いDが低周波数側にシフトしていることが確認され、レーザー照射に伴う明確な温度上昇が確認された。また、このような温度上昇はGNPが結合していないFNDからは確認されなかった。本ハイブリッドセンサーは細胞内局所を、温度をモニタリングしながら正確に加熱することを可能にし、熱に対する細胞の応答を調べることができると期待される。さらに、その表面を高分岐鎖ポリグリセロールでコーティングすることによって、分散性と細胞内以降を高度に制御可能なコンポジット化にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は今回開発したFND-GNP-ポリマーを融合したコンポジット量子センサーの表面をさらに化学的に修飾によって機能化することによって細胞内の特定の部位(核やミトコンドリアなど)に集積するシステムを作り、その領域を温度をモニタリングしながら精密に加熱することによって細胞の熱感受システムを解明する研究に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度までに達成した成果を、令和3年5月に開催されるナノ学会において発表するため。
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