本研究では、質量分析を用いた細胞内のタンパク質の構造解析手法”In-Cell Native MS”を確立するため、前年度までに不揮発性緩衝液や大腸菌破砕液存在下でのネイティブ質量分析を確立した。また、所属研究室の質量分析装置においてネイティブ質量分析の測定環境の整備を行った。それに対し、今年度は不揮発性緩衝液を含んだ試料分子のより効率のよい分析法の確立を目指し、ネイティブ質量分析の自動化を試みた。 ネイティブ質量分析の自動化システムはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)と組み合わせたシステムとして構築した。また、タンパク質の変性や複合体の解離を最小限にするため、SEC分離後にフロースプリッターを組み込み、流量を減少させることによって微量なエレクトロスプレーイオン化(nanoESI)を可能にした。モデルタンパク質であるシトクロムC(12 kDa)とC反応性タンパク質(5量体、125 kDa)を用いてSEC分析やnanoESIにおけるイオン化に最適な流速を検討した。また、使用したSECカラムの分画分子量(10 kDaから500 kDa)に対応するSECのスタンダードタンパク質の分析を行い、いずれのタンパク質も良好な分解能で分析できることを確認した。さらに、不揮発性緩衝液を含むタンパク質についても、移動相を酢酸アンモニウム溶液とすることでオンライン溶媒交換を可能にし、従来の手動で行う分析と同等の構造安定性を保ったままで測定できることを明らかにした。本研究成果については現在論文を投稿中である。
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