研究課題/領域番号 |
19K16100
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鈴木 智大 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (00804775)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | SunTag / ヒストン修飾酵素 / ChIP |
研究実績の概要 |
本研究では,特定ゲノム領域のヒストン修飾を改変する技術を確立し,エピゲノムレベルでの脂肪細胞の分化メカニズムの解明と制御を目指す。具体的には,【目的1】 SunTag法によるメチル化関連酵素を介した特定ゲノム領域のヒストン編集技術の確立し (2019-2020年度),その上で,【目的2】 SunTag法を用いてCebpa/Pparg 遺伝子座のヒストン編集による脂肪細胞の分化制御を行う (2020-2021年度)。
2019年度の計画では,「方法1-1: gRNAの設計・機能評価およびgRNA安定発現株の樹立」により機能的なgRNAを選出した上で,「方法1-2: SunTag因子安定発現3T3-L1脂肪細胞モデルの樹立」を行うこととしていた。また,2019年度から本年度にかけて「方法1-3: ヒストン編集を実現できるメチル化関連酵素の絞り込み」に取り組むため,ChIPの予備検討を開始することを計画した。
以上の2019年度の申請内容について,方法1-1に関しては予定通りCebpa,Pparg1,Pparg2の各遺伝子領域に9個ずつ機能的なgRNAを設計しレトロウイルス発現プラスミドを構築した。また,方法1-2に関しては,PiggyBacシステムによるSunTag因子の導入に関しては安定発現細胞を樹立できなかったが,代替措置としてレトロウイルスシステムを用いてSunTag因子を導入し,16ラインのSunTag因子安定発現3T3-L1脂肪細胞の樹立に成功した。さらに,方法1-3については,予定通りChIPの予備検討を開始して2020年度のChIP-qPCRおよびChIP-seqに備えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「方法1-1: gRNAの設計・機能評価およびgRNA安定発現株の樹立」に関しては,本計画で標的としているCebpa,Pparg1,および,Pparg2のそれぞれの領域にgRNAを設計し,gRNAをレトロウイルス ベクターのU6プロモーター下にクローニングした。その上で,機能的なgRNAをT7エンドヌクレアーゼI法によって評価した。その結果,それぞれの遺伝子領域に対して機能的なgRNAを9個ずつ (計27個) 設計することに成功した。
次に,「方法1-2: SunTag因子安定発現3T3-L1脂肪細胞モデルの樹立」に取り掛かった。本申請の以前からヒストンメチル化酵素をクローニングし,図1A中の酵素のうち,脂肪細胞分化に関係する酵素 (LSD1,PHF2,JMJD1C,JMJD2A,JMJD2B,JMJD6,SETDB1),脂肪細胞分化への関係が未報告の酵素 (JMJD1A,PHF8,PRMT1,PRMT5,PRMT7,JMJD3,JMJD2D,SETD7,SMYD3) を取得することができた。取得できた酵素をdCas9-GCN4と共にPiggyBacプラスミドに導入し,PiggyBacトランスポゼースと共に3T3-L1細胞にトランスフェクションを行い薬剤選択した。しかしながら,目的遺伝子の導入細胞を得ることができなかったため,予定を変更してdCas9-GCN4,ヒストンメチル化酵素をそれぞれレトロウイルスベクターに導入し,得られたレトロウイルスとgRNAレトロウイルスを3T3-L1細胞に感染させ,目的のSunTag因子安定発現3T3-L1脂肪細胞 (16ライン) の作製に成功した。
上記で作製した細胞ラインを用いて,「方法1-3: ヒストン編集を実現できるメチル化関連酵素の絞り込み」について,精度の高いデータを得るためにHA抗体とFlag抗体によるChIPの予備検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,まず,【目的1】 SunTag法によるメチル化関連酵素を介した特定ゲノム領域のヒストン編集技術の確立を目指して,2019年度に引き続き「方法1-3: ヒストン編集を実現できるメチル化関連酵素の絞り込み」を行う。具体的には,SunTag因子のChIP-qPCRによって,目的領域へSunTag因子が動員されているかどうか確認を行う。また,ヒストンのメチル化状態をChIPで評価することで,SunTag因子が動員されたことでヒストン修飾が変化したかどうかを評価する。さらに,Cebpa遺伝子およびPparg遺伝子のqPCRにより,SunTag因子の動員によって遺伝子発言が変化するかどうかを確認する。
次に,【目的2】 SunTag法を用いてCebpa/Pparg 遺伝子座のヒストン編集による脂肪細胞の分化制御を行うために,「方法2-1: Cebpa/Pparg遺伝子のヒストン編集の脂肪細胞分化への必要性検証」を行う。具体的には,CebpaまたはPparg遺伝子座のヒストン編集が脂肪細胞分化に及ぼす影響を評価するために,安定発現細胞の脂肪細胞分化を誘導したのちOil Red-O染色により脂肪蓄積を評価する。この際,酵素活性ドメインが同定されている酵素に関しては,酵素非導入群,酵素導入群,変異 型酵素導入群を比較して,CebpaとPparg 遺伝子座のヒストン修飾の脂肪細胞分化に対する影響を検証する。また,脂肪細胞としての表現型を詳細に解析するために,C/EBPaとPPARgが制御する下流遺伝子の発現をqPCR法により評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末より発生したコロナウイルスにより,納品が期日に間に合わない生物学試薬があったため次年度使用額が発生した。次年度発生使用額に関しては当該の生物学試薬の購入に充てる予定である。
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