研究実績の概要 |
Epstein-Barrウイルス(EBV)陽性胃癌を対象とし、ウイルス感染に伴うエピゲノム異常、クロマチン構造異常を明らかにし、癌化への寄与を解明することを目的とし、研究を進めた。EBV感染前後においてChIP-seq法によって活性化ヒストン修飾(H3K4me1, H3K4me3, H3K27ac), 抑制的ヒストン修飾(H3K27me3, H3K9me3)を取得し、ウイルス感染が誘導する変化を同定した。更にEBV感染前後におけるクロマチン構造変化をHi-C法によって検出し、近年発現制御との関連が報告されているクロマチンコンパートメントとドメイン構造を計算し、ウイルス感染による変化を同定した。これらのエピゲノム変化、クロマチン構造変化を統合的に解析し、特にウイルス感染によってヘテロクロマチン構造が消失し、エンハンサーとして活性化することを見出した。更にこのヘテロクロマチンの活性化にはEBVゲノムとの直接的な相互作用が関与していることを明らかにした。活性化したエンハンサー領域が近傍遺伝子の転写活性化に寄与していることを確認するため、エンハンサー領域と近傍遺伝子の直接的な相互作用を4C-seq法によって検出すると共に、活性化エンハンサー領域を標的としてCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集を行い、確かにエンハンサーとして転写調節に寄与していることを確認した。このEBVゲノムとホストゲノムとの相互作用によって活性化されるエンハンサー標的として、TGFBR2, MZT1を同定した。これらの遺伝子は公共データベース上のEBV陽性胃癌臨床サンプルで高発現していることが確認されると共に、我々が解析したEBV陽性胃癌臨床サンプルでの免疫組織染色においてもタンパク質レベルでの有意な高発現が確認された。本研究成果について論文投稿を行った。
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