研究課題/領域番号 |
19K16115
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
戸根 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (60806610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 睡眠 / HTS |
研究実績の概要 |
本研究では、In vitro睡眠解析系の構築により、哺乳類の睡眠覚醒制御の基盤となる分子機構を明らかにすることを目的とする。昨年度までに、カルシウム指示薬を利用することによりマウス神経細胞の初代培養系において神経活動をモニターすることが可能となった。取得されたデータから、初代神経細胞が同期発火している様子が再現性良く見られた。現在、この状態から睡眠時・覚醒時のパターンが誘導できるかどうか、詳しい検討を行っている。この検証では、神経細胞への薬剤の添加や、特定の遺伝子の導入などを行いながら、神経細胞の活動パターンの変化を観察する必要がある。今年度は特に神経細胞への遺伝子導入に利用可能なアデノ随伴ウイルス(AAV)の検討を進めた。特にこれまで睡眠覚醒制御への関与が報告された因子としてリン酸化酵素であるカルシウムカルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMKII)に着目し、神経細胞におけるCaMKIIの活性をAAVにより摂動することを目指した。活性化型CaMKII変異体またはCaMKIIインヒビターを発現するAAVを作製し、マウスに投与したところ活性化型変異体の発現により睡眠時間の増加、逆にインヒビターの発現により睡眠時間の減少が観察された。AAVは脳全体に渡って感染しており、この表現型はこれまでノックアウトマウスで見られた結果とも一致することから、AAVによるCaMKII活性の摂動系が構築できたと考えられる。今後はこのAAVを利用して、CaMKII活性を摂動した際に初代神経細胞の活動パターンがどのように変化するか詳しく検証を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AAVによるCaMKII活性の摂動系は、マウス個体の睡眠表現型に対して強い効果を発揮することから、初代培養系への摂動に関しても効果が期待できる。一方で初代神経細胞の測定系については、より安定した実験系のためのさらなる条件検討も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
AAVによるCaMKII摂動系を初代培養系へ応用を進める。初代培養系で見られる神経活動変化から、in vitroでの睡眠・覚醒パターンを捉えられるか検証する。その際には、AAVを投与した動物個体から得られた睡眠表現型の情報が重要になると思われる。また初代神経細胞の測定系については、より直接的に神経活動をモニターできる膜電位インジケーターの導入も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期化するCOVID-19の影響で消耗品の欠品が発生し、予定していた実験の一部が遅延した。また予定していた海外での学会参加をキャンセルした。予定していた実験のための消耗品購入や学会参加のための旅費として次年度に使用する計画である。
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