研究課題
本研究ではin vitro睡眠覚醒解析系を確立することで、睡眠覚醒制御の分子基盤を明らかにすることを目指している。昨年度までに、カルシウム指示薬を利用してマウス初代培養神経細胞における神経活動をモニターすることに成功した。今年度は実験系をより簡便に構築する目的でカルシウムセンサーGCaMP6を使用した神経活動評価に取り組んだ。アデノ随伴ウイルス(AAV)を利用することで、マルチウェルプレート内で初代培養神経細胞においてGCaMP6を発現させ、蛍光シグナルの取得を行った。この結果、GCaMP6を利用しても安定に神経活動が測定可能なことが明らかになった。続いて、睡眠覚醒の重要な制御を担うと考え解析を継続しているカルシウムカルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMKII)について、この分子機能がin vitroでの神経活動にどのような影響を与えるのかを検証した。昨年度までに構築したCaMKII活性制御系を利用し、初代培養神経において活性化型CaMKIIを発現させ、その際の神経活動の変化を評価した。この結果、神経活動の明確な変化は見いだせなかったが、今後初代神経細胞の神経活動を変化させられるような薬剤などを利用し、その応答の違いなどを詳細に観察することでCaMKII活性の影響を顕在化させることができるかもしれない。一方で、並行して行ってきた睡眠制御因子CaMKIIに関するマウス個体レベルの解析では、CaMKIIが自身のリン酸化状態により、睡眠の導入と維持という異なる2つの機能を持つことを見出し、この結果を論文として報告した。今後はCaMKIIリン酸化変異体を対象にin vitro睡眠解析系に供することで、睡眠の量・質に影響を与えるような未知のリン酸化状態を同定することも可能かもしれない。
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PLoS Biology
巻: 20(10) ページ: e3001813
10.1371/journal.pbio.3001813
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20221005-2/index.html