研究課題/領域番号 |
19K16118
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江口 智也 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (60829050)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リソソーム / LRRK2 / オートファジー |
研究実績の概要 |
リソソームは細胞内分解の主要な場であり、品質管理維持に重要なオルガネラである。申請者はこれまでにパーキンソン病・クローン病関連遺伝子産物であるLRRK2(leucine-rich repeat kinase 2)がリソソームストレスに応答することを発見・報告していたが、リソソームのストレスがどのようなメカニズムで感知されそしてLRRK2へと伝達されるかは未知であった。 2019年度はLRRK2の上流因子としてオートファジー関連分子が関与する可能性に関して探索した。培養細胞にクロロキン処理によるリソソームストレスを加えると、LRRK2の基質であるRab10のリン酸化が亢進することを確認した。またLRRK2やその基質であるRab8/Rab10はリソソーム上でLC3と共局在した。オートファジー因子であるATG5をドキシサイクリン誘導性に発現するマウス線維芽細胞にクロロキン処理を行った場合ではATG5の発現依存的にRab10のリン酸化が亢進した。このことからリソソームストレス下流で生じるLRRK2応答にATG5が必要であることが示された。加えてATG3、ATG16L1、FIP200ノックアウト細胞を作出しRab10リン酸化を解析したところ、ATG3、ATG16L1(ともにリソソーム膜上でのLC3脂質化に必要)はRab10リン酸化に必要であるが、FIP200(通常のマクロオートファジーには必要だがリソソーム膜上でのLC3脂質化には不用)はRab10リン酸化に関与しないという結果が得られた。一部のオートファジー分子がリソソームストレスをLRRK2へ伝達する機能を果たしている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではリソソームストレスセンサーのゲノムワイドスクリーニングを優先して行うことを計画していたが、LRRK2に関する研究の競合を鑑みてLRRK2によるリソソームストレス応答におけるメカニズム解析を優先して行うこととした。そのためゲノムワイドスクリーニングの計画に関しては遅れている。一方でLRRK2関連の研究に関しては期待通りの進捗が得られており、LRRK2によるリソソームストレス応答を媒介する分子の候補としてオートファジー関連因子の一部に着目して研究を開始したが、実際にこれらの因子の欠損でLRRK2の応答が消失することが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジー分子を欠損する細胞株を作成しリソソームストレス条件下でのLRRK2の応答を解析する。またATG16L1のC末端WDRドメインはマクロオートファジーには必要でないが、非オートファジー機能であるリソソームストレス時のLC3脂質化には必要であると報告されている。そこでATG16L1変異体を作成しATG16L1ノックアウト細胞に導入することで、LRRK2の応答がオートファジー関連分子の非オートファジー機能であるかどうか検証する。さらにオートファジー分子とLRRK2の間をつなぐメカニズムを解析するため、オートファジー分子依存的なリソソーム膜のプロテオーム変化を解析する。 またLRRK2応答に限らず、より一般的なリソソームのストレスセンサーを探索する目的でゲノムワイドスクリーニングを行うことを検討している。既知のリソソームストレスセンサーとしてmTORとGalectinが挙げられるが、これらとは独立したストレス経路を解明するため、TFEBの核移行・転写亢進をGFPの蛍光として検出するプローブを開発し、セルソーターを利用したCRISPRスクリーニングを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な研究の競争状況により、当初の研究計画における研究の優先順位を入れ替え、リソソームストレスセンサーのゲノムワイドスクリーニングによる探索よりもLRRK2関連の研究を優先して行うこととなった。そのため当初の計画よりも2019年度にかかる費用が減少した。2020年度はLRRK2のリソソームストレス応答に関連するより発展的な解析を行うことに加えゲノムワイドスクリーニングに必要な資材の購入に繰越となった助成金を使用する。
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