研究実績の概要 |
オートファジーの生体における重要性は,関連分子を欠損したマウスの解析からも明らかであるが,実際に生体の『いつ,どこで活性化されているのか?』,『そのオートファジーは何を分解して,どのような生命現象に貢献しているのか?』はほとんど未解明のままである.これらの学術的問いの解明には,生体内におけるオートファジー活性の簡便な可視化が必須であるが,現在のところ,in vivoでオートファジー活性を評価できる低分子化合物は存在していない. 申請者は㈱同仁化学研究所との共同研究により,オートファジーを可視化できる低分子化合物として,DAPGreenとDALGreenの2 つのプローブの開発に成功している(FEBS let., 2018).DALGreenはオートファジーの終着点であるオートリソソームのみを蛍光標識するのに対し,DAPGreenはそれ以前の隔離膜から蛍光標識することが可能である.すなわち,この2つのプローブの差から,オートファジー活性を評価できると予想される. 本研究では,開発した低分子化合物を改良し,簡便にin vivoオートファジー活性を可視化できるプローブの作製を目指す. 本年度の成果は以下の通りである.① 本研究で新規に開発したDAPRedとDALGreenとを同時使用することによって検出できるオートファジー活性の感度が,既存のオートファジー活性測定方法(tandem-LC3)と比較しても遜色ないことを確認できた.② 開発したプローブがオートファジー関連構造のみを識別できる特異性を示した.③ 開発したプローブが小胞体膜に起源をもつ従来型のオートファジーのみではなく,ゴルジ体膜を起源に持つ新規オートファジーについても検出できることを明らかにした.④ 以上の結果を学術論文としてまとめ,投稿している.
|