前年度までのプロテオーム解析で同定したタンパク質ついてさらに解析を進めた。これらの因子のノックダウンによる小胞体の細胞内分布などへの影響は見られなかったものの、神経変性疾患・精神疾患の発症に関わるタンパク質が小胞体膜上でマイクロドメインに濃縮されていることが明らかになった。さらにこのマイクロドメインの構成因子のプロテオミクス解析などを行い、形成に必要な相互作用因子などを同定し、マイクロドメイン形成機構の一端を明らかにした。神経変性疾患・精神疾患の発症に関わるこのタンパク質内の変異がマイクロドメイン形成に与える影響の解析などを現在進めており、マイクロドメインの形成と神経変性疾患・精神疾患発症との関連性を今後明らかにしていく。 さらに前年度までに培養細胞実験系を用いて開発したプロテオーム解析手法を、マウス胎児脳由来の初代培養神経細胞に応用した。記憶や学習の基盤となる現象である長期増強を誘導するための神経刺激や特定のストレスを初代培養神経細胞に与え、開発したプロテオーム解析手法により長期増強やストレスの前後での特定のマイクロドメインの変動を解析した。タンパク質合成に関わるタンパク質や細胞内輸送に関わるタンパク質など一部のタンパク質において、プロテオームの変動が見られた。長期増強に応じた神経細胞内の再編成やストレスへの適応のために、これらのタンパク質を含むマイクロドメインの形成が動的に制御されていることが示唆された。
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