本研究は、2本の鞭毛を持つ単細胞緑藻類クラミドモナスを用い、カルシウムイオン依存的な鞭毛構築機構を解明することを目的とした。昨年度は、外腕ダイニン欠損株の解析から脱重合キネシンkinesin-13がカルシウムイオン依存的な鞭毛再生に関与している可能性を見出した。今年度の主な成果は次の通りである。 ①複数の鞭毛構造蛋白質欠損株においてkinesin-13-3xHA発現させた株の樹立 鞭毛構造蛋白質を欠損した変異体は共通して鞭毛の再生が野生株と比べて優位に遅い。Kinesin-13が関与している可能性を検証するために、外腕ダイニン欠損株oda1株に加え、中心対微小管欠損株pf18株、ダイニン制御複合体欠損株pf2株にkinesin-13-3xHAを発現させ、鞭毛再生時におけるkinesin-13のリン酸化を検証した。その結果、いずれの株においてもリン酸化が抑制されていることが分かった。さらに、カルシウムの存在によってkinesin-13のリン酸化が促進されることが分かった。 ②鞭毛蛋白質標識法の樹立 鞭毛再生時における蛋白質合成を検証するために、Surface sensing of translation (SUnSET)法がクラミドモナスに適用できるかどうかを検討した。SUnSET法はアミノアシルtRNAに類似した抗生物質ピューロマイシンが合成中のポリペプチド鎖に取り込まれることを利用する方法である。鞭毛再生中のクラミドモナスにおいて、ピューロマイシンは細胞体および鞭毛に取り込まれ、その後、抗ピューロマイシン抗体によって検出できることが分かった。この方法はクラミドモナスの鞭毛構築だけではなく、細胞周期の研究などにも応用可能であると考えられる。現在、この成果は雑誌へ投稿し、査読を受けている最中である(2022/5/9現在)。
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